40代を越えると誰しもに起こりうる老眼症状。
年を重ねるごとに近くを見るのに苦労するようになります。
そして仕方ないから手元用の眼鏡を作るなとなるわけですが、ここでふと選択肢がふたつあることに気づくわけです。
ひとつが老眼鏡。
もうひとつが遠近両用。
老眼鏡を作ろうと思っていたけど、遠近両用も便利と聞くし、一体どっちを作ったらいいんだろうと悩んでいる人も多いはずです。
どちらも手元が見やすくなる効果を持っていますが、実際に使うときの考え方は実はだいぶ違ってくるのです。
よくわからないまま適当に選んでしまうと、せっかく買った眼鏡が目的と噛み合わなくて結局作り直す羽目になったなんてコトになりかねません。
2種類のレンズの違いを知って、後悔しない眼鏡作りに役立ててくださいね。
一番の判断基準は自分がどう使っていきたいか
まず大前提として老眼のある人が眼鏡を作ろうと思ったときに、「この人の目だと老眼鏡(もしくは遠近両用)でなければいけない!」という風に決まるわけではないことを覚えておいて下さい。
目の状態も重要ですが、最も気にしなければならないのは『いつ』、『どんな場面で』、『どのように』使いたいかということです。
大雑把に言うなら、
老眼鏡は近くを見るためだけに使う。
遠近両用は近くも遠くも見たい場合に使う。
となりますよね。これは皆さんのイメージ通りです。
しかし問題なのは、実際に使ってみるとわかるのですが、どちらも役立つ部分と意外に融通の効かない部分が存在するということなのです。
家庭や仕事で近くも遠くもどちらも見えないと困る場面は多いと思いますが、これを老眼鏡で対応しようとすると、手元作業時はいいとしてテレビや壁のカレンダーや人の顔を眺めるときにどうしても眼鏡を外すというアクションが必要になってしまいます。
これは実は結構なロスになっていて、かけ外しは別に面倒じゃないよと言っていた方でも遠近を作ってみるともう元には戻れないという話はよく聞きます。
またかけたときと外したときの景色の見え方が大きく違うので、頻繁に付け外しがある場合は目に負担がかかりやすかもしれません。
思いの外ストレスになることが多いというわけですね。
そして、じゃあ遠近両用ならすべて解決かというと残念ながらそうとは限りません。
遠近両用は遠くも近くもばっちり見える便利な眼鏡というイメージがあるようですが、実際は完全な見え方を確保できるレンズというわけではないのです。
遠くの度数を決定した後に近くの度数をどれくらい入れるか(加入)決めるわけですが、この加入はいくらでも入れられるわけではありません。大抵のメーカーのレンズで+3.50Dあたりが最大値となっています。
つまりあまり遠くの度数が強すぎると、加入をたくさん入れても思ったほど近くが見えるようになってこないという事態が発生します。
遠くの度数を落とせば近くはマシになりますが、遠方視力が足りなくなってしまえば困ってしまう場合もありますよね。
そもそも加入が大きいほど遠近特有の歪みも強くなるので、ここも必要な加入度数を見極める必要があります。
このように、遠近両用は遠と近のどちらを優先するかという命題が常に付いて回ることを覚えておきましょう。(ただ強い度数を必要としない場合は、遠近どちらも欲しい分の視力を確保できることが多いのでそこまで心配しなくても大丈夫です)
遠近と老眼鏡の比較検討、気になるのはどの部分?
遠近両用眼鏡の特徴
上図は一般的な遠近両用眼鏡の度数配置です。
眼鏡の上の方で遠くを見て、下の方で近くを見るというのが基本。そしてその中間は度数がグラデーションのように徐々に変わっていくエリアになっています。
このようなレンズの設計上、色のついていない両サイド部分には歪みが発生してしまいます。
つまり中央付近の色付き部分でモノを見る形になるので、普通の眼鏡に比べると視野が狭くなっていると言えます。
ちなみにこの歪みや視野の広さは、入れる度数やレンズのグレードによってかなり変化するのも重要な点でしょう。
○遠距離と近距離の用途を1本でこなせる
最大の特長はその利便性。1度使うと手放せない人多し。
使うその時でも持ち歩く時でも複数本を1本に減らせるのは◎。
○それぞれ最も見やすくしたい距離に調節出来る
遠と近のどちらに寄せるか決められるので、基本街歩きで使ってお店入った時に商品説明や値札などを見たいとか、座り仕事で近くの見え方大事だけど移動にも最低限支障がないようにしたいとか、ニーズに合わせた調整ができる。
○運転も可
遠近でも視力が確保出来れば運転は問題なく可能。外を見るだけでなく、停車時にカーナビを確認したり車内の咄嗟の操作にも遠近なら対応しやすい。
○コツはいるが後から微調整もできる
実際に作った後で、最初に考えていたよりもう少し手元がよく見えると助かるんだけどと言うような場合でも、フレームの調整でかける位置を上げ下げして見え方の微調整が行える。
●1枚に2つの度数を入れる設計上、歪みが発生して視野が狭くなる
グワグワするとかフワフワするとか色んな表現をされるレンズの歪み。
度数が大きいほど影響は大きくなる。また乱視が強い場合も注意。
遠近はレンズの値段がわりとそのまま性能に直結するので、こういった人はフレーム価格を抑えてでもレンズにお金をかけたほうがよい。
●足元が手前に迫ってくる感じがある
手元用の度数=手前に景色が迫ってくるように見える。つまり加入が大きいとそうなりやすいので、遠近に慣れていない人は加入は抑えるべき。
階段降りる時が特に危険なので、最初は家の中で要練習。
●慣れない人は慣れない
基本的には、遠近の歪みを脳が認識して補正してくれるようになる。よって1~2週間である程度慣れてくるが、人によってはいつまでも気持ち悪さが抜けない場合がある。
入れる度数や累進帯長(上下度数をどれくらい急に変化させるかの度合い)を修正することで治る可能性もあるので、まずは眼鏡屋さんに相談しよう。
●費用がかかる
遠近は単焦点レンズに比べると価格が高くなりがち。
安くしようと思えば数千円に抑えることもできるが、代わりに視野の狭い使いづらいレンズになることは覚悟したほうがいいかも。
人によっては低価格帯でも全く不便を感じない場合もあるので、テストレンズで試すのが吉。
老眼鏡の特徴
○手元の見たい対象をレンズいっぱいに使ってはっきり見ることが出来る
ピントの合わせられる距離は限られるが、レンズ全体が視野範囲なのでその距離における見づらさは全くない。
○費用を抑えられる
顔に合ってさえいれば出来合いの安価な老眼鏡でもOKなので出費は最低限。
その辺の百貨店やホームセンターなどでもすぐ手に入るので時間も取られない。
○眼鏡屋の老眼鏡なら左右差や乱視にも対応している
安価な老眼鏡との違いとして、強度数や乱視矯正に対応、左右で違う度数も可能、などか挙げられる。
またPD(瞳孔間距離)も設定されるので、レンズの光学性能が最大に発揮されるのも重要なポイント。
●設定した距離以外は見えない
顔を上げても周囲の情報はぼやけてしまう。
場合によっては机の書類+パソコン画面も難しい人もいる。
●移動するのは難しい
座ったまま動かないことが前提。
遠視のある人が+1.00Dなど弱めの度数を入れて使用しているならその限りではない。
●かけ外しの手間が面倒
遠距離を見ようとするとどうしても眼鏡を外さなければならない。
額に上げるにしろテーブルに置くにしろ手間はどうしてもかかる。
●裸眼視力が低ければ結局2本以上の眼鏡を用意しなければならない
裸眼で遠くの視力が出ているなら良いが、そうでないなら遠く用の眼鏡+老眼鏡の2本をかけ持ちしなければならない。よってコストが高くつく。
コツは測定する人に状況をなるべく詳しく説明すること
上記の特徴を眺めてみてどうでしたか。
当てはまる、気になる項目はいくつかあったと思います。
そうしたら、それをなるべく詳しく測定者に伝えてほしいのです。
あなたの生活の中でこう使いたいとか、ここが困っているという話が何よりの手がかりです。
何だか対面だと突っ込んだところまで話しにくくて、そこまで言わなくてもいいかとか少し怪しいけど見えると答えてしまうとかがあるようですが、遠慮は不要です。
しかし何がベストな眼鏡かは人によって千差万別。そしてその情報はかける本人しか持っていないのだということを覚えておきましょう。