度なしの遠近両用眼鏡って聞いた事ありますか?
なにそれどういうこと?と思うかもしれません。
遠近両用眼鏡は上半分に遠く用の度数、下半分に近く用の度数を入れることで、どちらの距離も見えるようにしましょうという眼鏡ですよね。
では度なし遠近はどうかというと、遠く用もしくは近く用のどちらかには度数を入れて、もう片方には入れない(正確には入れない状態を再現する)レンズを使用します。
特殊な作りに見えるかもしれませんが、これ実は普通の遠近眼鏡と設計はまったく同じなんです。
それどころかこちらのほうがメリットが大きい要素もあるので、条件に当てはまる人はぜひ検討してみてください。
度なし遠近はどちらかが裸眼で見える人向け
度なし遠近はどんな人にオススメかというと、
○老眼で近くは見づらいけれど、それ以外の中~遠距離は裸眼でまったく問題なく見える人
○近視で遠くがぼやけるが、眼鏡をかけると近くを見る時に疲れてしまう、外した方が良く見えるという人。
といった人達がベストマッチでしょう。
こういった場合、裸眼でも見え方が十分あるほうには一切度を入れないという手段が取れます。
例えば老眼の進んだ年配の方は、街を歩いてる時は眼鏡に頼らない人が多いです。つまり遠くを眺めるのに不自由はしていない。
こういった方を検査してみて、遠視の症状がないようであれば遠くの度数はナシとしてしまうことは良くあります。
出来上がった眼鏡は、レンズ上部には何も入れていない素通し状態なのでご自身の眼の力で見てもらう状態。レンズ下部には加入度数が入っているので手元を楽に見ることができます。
あとは弱めの近視の方に限りますが、遠用度数と同じ数字を加入として入れることで下半分を計算上度なしと同じ状態にすることが可能です。
上で見る際は矯正がかかり、手元は外した時とほぼ同じ環境で楽に見れるというわけですね。
度なし遠近の処方箋表示
では仮に度なし状態の遠近が処方されたとして、処方箋ではどのような表記がされているでしょうか。
◇遠用部が度なし(乱視なし)
SPH球面度数 | CYL円柱度数 | AXIS円柱軸 | ADD加入 | |
右 | ±0.00D | +2.50D | ||
左 | ±0.00D | +2.50D |
球面度数が±0.00Dなら遠用部は素通し状態です。
◇遠用部が度なし(乱視あり)
SPH球面度数 | CYL円柱度数 | AXIS円柱軸 | ADD加入 | |
右 | ±0.00D | -1.75D | 180° | +2.50D |
左 | ±0.00D | -1.25D | 20° | +2.50D |
乱視に関する補正を行っているので、裸眼より見え方は改善しているはずです。
よってこの場合は度なしというくくりではありません。
◆近用部が度なし
SPH球面度数 | CYL円柱度数 | AXIS円柱軸 | ADD加入 | |
右 | -2.50D | +2.50D | ||
左 | -2.50D | +2.50D |
遠く用の度数-2.50Dに近く用の度数2.50Dを加算している状態。
-2.50+2.50=0.00という計算になるので、結果的に近くは度なしで見ていると言えます。
眼鏡のかけ方によって見え方が変わる可能性がある
注意点として、遠近両用は遠くから近くへグラデーションのように度数が変化するのですが、その変化がどの位置から始まるかをレンズごとに設定できます。
最初の製作時に取ったアイポイントを基準に設定するので、例えばフレームがゆるくなってずり落ち気味になったりするとこの基準位置からもズレてしまいますよね。それにより度数が変化している途中部分に目がきてしまうと必要のない度が半端に入ってしまうかもしれません。
最初と比べて見え方に違和感が出てきたら、レンズ交換を考える前にフレームの調整を依頼してみましょう。それだけでアッサリ解決するときもあります。
度を入れないことのメリット
片方度なしだと、両方度数があるパターンと比べて何が有利かというお話もしておきます。
歪みや視野欠けを抑えやすい
遠近両方眼鏡にはつきものの視界の歪みですが、これがひどくなる要因はいくつかあります。
- 強度数、強乱視
- 上下の度数差(=加入)が大きい
- 累進帯長の位置が悪い
つまり、処方された度の数字が大きければ大きいほど見やすさ扱いやすさは低下するということです。ということは、不要な度を入れずに済む度なし遠近ならこの歪みをかなり抑えることができるでしょう。
遠くの度がないほうが加入自体もあまり入れずに済むことが多いので、その点でも有利と言えます。
普段通りの自然な見え方に近くなる
新しい眼鏡は、その種類に関わらず慣れが必要になります。今まで見ていた景色とは少なからず変わるので、どうしても脳が対応するのに時間がかかるのです。
仮に最初からバッチリよく見えたとしても同じことで、完全に気安く楽にかけられるようになるには身体側からの微調整が必要だと思っておいて下さい。
例外は度の入っていないレンズです。
これならいつもの裸眼と同じなので、違和感は限りなく小さくなる可能性があります。もちろん累進への慣れは必要ですが、それにかかる時間は短くて済むでしょう。
普通の単焦点の眼鏡ではダメなの?
じゃあ普通の眼鏡をかけたらどうなのって話でもありますが、もちろんそれでも構いません。
ただ、その場合どうしてもかけ外しの手間が残ってしまいます。
遠くと近くを見るタイミングが完全に分かれている人なら構わないかもしれませんが、仕事などで使っていると視点の移動は頻繁に発生しますよね。
例えば手元の書類仕事をしている時に老眼鏡をかけている人が、棚に書類を取りに行くとか時計を確認したいとか誰かに話しかけられた時とかに、いちいち眼鏡を外して確認するのは大きな手間です。
逆に常に眼鏡をしていて、近くを見る時だけ片手でクイっと眼鏡を持ち上げている人。片手が塞がってしまうので字を書く時は億劫そうです。
この手間を改善するために生まれたのが遠近両用の眼鏡なので、裸眼でどちらかは見えるからといっても遠近にする意味がないわけではないのです。
まとめ
遠近両用の片方を度なし、というのはなかなかイメージしづらいのかもしれません
実際そういうレンズは作れないと思いこんで、長い間単焦点で過ごしていたという方もいらっしゃいました。今は快適に度なし遠近で過ごさているので、その期間はちょっと勿体なかったですね。
なので、もしこんな眼鏡が作れたら助かるというものがあったなら、まずは眼鏡屋さんに相談しましょう。
生活のあらゆる状況に対応するためにレンズは日々進化しているので、あなたにピッタリのレンズが見つかるかもしれませんよ。