手遅れ段階になる前に!早めに対処できれば白内障は怖くない

眼球内の水晶体が白く濁ることでものが見づらくなっていく白内障。加齢によって発症率が上がっていくこともあり、あなたの周囲でも白内障を患っている、もしくは治療をしたことがあるという人は多いのではないでしょうか。

80代以上の発症率は100%近いという厄介な眼病ですが、実は現代では治すことが難しい病気ではありません
放置すれば失明する可能性すらありますが、ちゃんと対処すればかなり安全に治療することが出来るのです。

しかしどうしてなのか、白内障を放っておく人が後を絶ちません
自分がどうやら白内障っぽいということを承知しているのに、何故か手を付けようとせず、手遅れになるまで自然のなすがままに過ごしているのです。

この記事ではそんな重症予備軍の人たちの心理と、放置するとどういう結果になるのか、そして治療するとどんな解決を見るのかという点を切り取ってみました。

 

どうしてそんなに怖がるのか

白内障を怖がる女性

眼鏡屋をやっていて不思議に思うのが、『白内障とわかっていて放置する人』の存在です。

眼鏡を作りに来て、さあ視力検査だ、というときに「わたし白内障なんですけど…」とおそるおそる申告される方がよくいます。白内障は視力が出づらいことをしっかり認識していらっしゃるのでしょう。
申告していただくのは非常にありがたいのですが、詳しく聞き取りをしてみるととくに治療や対策はしていないという方の多いこと多いこと。いずれ勝手に治ると思っているわけでもないでしょうに、初めて起こした行動が”眼鏡屋に眼鏡を作りに来る”というのは実に不思議です。

言うまでもないですが、眼鏡自体に治癒効果はありません。
進んだ白内障では、視力の矯正すらままならないことがほとんどです。見えない原因が屈折異常ではなく水晶体の濁りなので、眼鏡レンズ(もちろんコンタクトも同じ)では無力な場合が多いのです。

だというのに、落ちた視力をなんとか眼鏡でカバーしてなんとか白内障という現実から逃げ切ろうとお店に来る人が度々見受けられるのは、一体どういうことなのでしょう。

 

白内障であることに直面したくない人が多い

いらっしゃる方で受ける印象として多いのが、

  • 白内障と意識するのが怖い
  • いずれ見えなくなるかもという事実に向き合いたくない
  • 手術を受けたくない、費用をかけたくない
  • 眼鏡できっとごまかしきれるハズ

といった心の動きです。

眼科へ調べに行って白内障と確定してしまったら、とにかく何らかの対処をしなくてはならない。検査や治療に長い時間が取られるだろうし、お金もかかるだろうし、なにより、(万が一だとしても)いずれ見えなくなりますよとは言われる可能性がある。
そのあたりのことが面倒であったり、恐怖を感じる部分であったりするのかもしれません。

私からの何か治療をしていますか?という問いに「何もしていません」と返ってくるとき、『何もしたくありません』という心の声も同時に聞こえてくるのです。だって視力がなかなか出ないのに、白内障についてどうしたらいいでしょうかという質問が飛んでくることがほとんどないのですから。
端くれとはいえ眼のプロが目の前にいるのだから、もう少し相談して頂いてもいいと思うのです。やはり白内障という病気が自分に降り掛かっている事態に直面したくない気持ちがあるのかもしれませんね。

 

白内障は早いほど対処がしやすい

年配の白内障女性

水晶体は年齢を重ねるにつれ、固く、動かなくなっていきます。
なのでいざ白内障の手術や検査をしようと思っても、水晶体が固いことで正しく検査が行えずに手術の難易度が上がる可能性があります。
特に水晶体の代わりに入れる眼内レンズをどういったものにすればいいかという、眼軸長を測る検査などに支障が出ると非常に厄介です。

よってどんな治療を施すにせよ、眼科に行くタイミングは早いほどいいです。
進行がしている場合は言わずもがな、まだまだ初期段階の場合でも早めに点眼薬などの進行を遅らせる治療を行うことができれば、その分白内障症状の悪化を抑え込むことが可能です。
その他の対処法と併用して瞳の濁りをうまく減らしていけば、手術の必要なく一生を過ごせる確率も上がるのは重要な点でしょう。

いずれにしても、引き伸ばしに引き伸ばしてようやく検査を受けたときに、もう手術も難しい手遅れの段階にあったということがないようにするのが最も大事です。

 

前より手術は随分安全になった

安心している女性

昔の白内障手術といえば、水晶体の核などを取り出すために瞳を大きく切開するというのが通常でした。これでは感染症・合併症のリスクが大きく、また手術時間も長くなってしまうという欠点を抱えていました。

しかし現在では

・眼内で取り出す水晶体を超音波で細かく砕く技術
・砕いたものを吸引する機材
・眼内レンズを眼の中に挿入してから膨らませるアイディア

など、傷口を可能な限り小さく済ませることが出来るようになっています。
これにより手術時間は減り、出血も抑えられ、術後の再発や乱視発症などのリスクも相当低くなったと言えるでしょう。
何事にも100%はありませんが、もはや白内障手術は成功して当たり前、というところまで来ているのです。

 

こんな症状が出たらせめて検査だけでもしに行こう

あらゆる病気の例にもれず、白内障にも初期症状があります。
状況によっては気付きづらい場合もありますが、次の例を見て意識的に症状を探れるようにしておきましょう。間違っても、我慢できなくなるくらい不自由になってから行動を起こすなんてことにはならないようにして下さいね。

  1. 視界が霞む
  2. 景色を眩しく感じるor暗くなる
  3. 対向車のヘッドライトが以前より邪魔になった
  4. 本が読みづらい
  5. 近視が急に進んだ
  6. 物がダブって見える
  7. 明るい場所から暗い場所への移動、またはその逆をしたときに目が慣れるのに時間がかかる

白内障は水晶体の濁りによって入ってくる光が乱反射して視界が白く染まるのが主な症状です。
しかしそれ以外にも、逆に光を取り込めず暗い所がより暗く感じたり、ものが分裂して見えることで近くを見ることに支障が出る場合もあります。老眼かな?と思ったら実は白内障の兆候だったということもあるので要注意です。

あと意外に思うかもしれませんが、白内障のせいで近視が進む=近くの方が以前より見えるようになるパターンもあります。水晶体が固く変性することで屈折率(光の曲がり方)が変わり、いつの間にか近視寄りになっていたということがあるのです。
何故か老眼が治った!と喜んでいる人、実は白内障の始まりなのかもしれませんよ?

 

こんなに悪化するまで放置する人たち

前項のような症状があっても見ぬフリをした結果、にっちもさっちも行かなくなった人達も少なくありません。

もはや遠くも近くもまともに見えない、新聞も一番大きな見出ししか読めないので世間の情報はテレビの音声頼みだ、道行く人の顔が判別できないので少し遠くにいる人がこっちに向かっているのか遠ざかっているのかわからない、などなど。
そんな状態で自転車に乗ってお店に来た人もいました。帰りはどうか押して帰ってくださいねとお願いしましたが、面倒を避け続けた末にこうなりかねないのが白内障なのです。

 

どんな風に見えるようになる?

では実際に白内障に悩んでいる人が手術を行ったとして、どのように改善を見るのでしょう。
起こる良い変化と留意しなければならないポイントを書き出しておきます。

視界は一気にクリアになる
目が若返ったと実感する
濁りのある水晶体を取り除いて綺麗な人工レンズに取り替えるので、今まで不鮮明だった視界がすごく綺麗に見えるようになります。手術経験者に聞くと、「見えるようになった」の言葉の前に、すごく、とか思ったよりずっと、という言葉をつける人が多いことからも効果の程がわかるでしょう。

・見えるようになるまでの時間はまちまち
手術をした直後からバッチリ完璧に見えるかというと、そこにはどうしても個人差があることを覚えておいてください。
今まで無かった人工の異物が目に入った訳ですから、脳や感覚が慣れるのに少し時間が要るのは仕方ないと言えます。早い人ならその日のうちに問題なく見えるようになりますが、基本的には違和感なく馴染むのに数日~一週間くらいは考えておいた方が良いでしょう。

・しばらくはまぶしさが残るかも
・黒い影に気づくことがある
白内障だった方は、言うなれば曇りガラスを通して景色を見ていたわけで、手術はそれを突然綺麗なガラスに取り替えた状態なわけです。ですから、今まで遮られていた光がモロに目の中に入ってくるので眩しさを感じる可能性があります。
もちろんこれは白内障症状としての眩しさとは全く原因を異にしているので心配する必要はありません。時間が経てば気にならなくなります。

同じように、治療後に小さな影が見えるようになる時がありますが、これもさほど気にしなくて大丈夫です。
眼球の内部を満たしている硝子体というゲル状の組織が歪むことによってその影か視界に映り込む現象なのですが、歪みが小さければそのうち脳が認識しなくなるからです。
今まで見えなかった影が急に見えるようになったので最初は気になるかもしれませんが、慣れるので問題ありません。
もし何時までも目に映り続けるようなら眼科医に相談をしてください。

・調節力はなくなる
水晶体という組織は、普段遠くや近くを見ようとするとそれに合わせて厚みを変えてピントを合わせる役割を担っています。
白内障手術ではこの水晶体を砕いて取り除いてしまうので、距離に合わせてピントがボケないよう調節する力は失われてしまうのです。

代わりに入れる眼内レンズは視界がクリアになるものの特定の距離にしかピントが合わせられないので気をつけてください。なので、手術では一番見たい距離に合わせて入れるレンズを選択する必要があります。
そしてピントの合わない距離を見ようとする時は眼鏡で対応する形になります。

せっかく手術したのに眼鏡が要るのか…と思うかもしれませんが、手術しなければ眼鏡をどう使おうが見えなくなってしまうのです。それを考えれば十二分に快適な生活が送れると言えるでしょう。

※複数の距離に対応出来る多焦点レンズもありますが、近くも遠くもよく見えるようになるわけではなく、どちらの見え方もある程度妥協することで両方に対応できるレンズ、というのが正確な実態です。
一箇所のみ見る単焦点レンズとどちらが良いかはお医者さんと相談して決めてください。

 

眼鏡屋で白内障は発見できるのか

眼内検査中の男性

結論から言うと、なかなかに難しいです。
あきらかに進行が進んだ人であれば目に見えて黒目が白濁するので気付けるかもしれません。しかし眼鏡屋にある機器は基本的に視力測定を目的としているので、眼内を細かくチェックする用途には不向きなのです。

強いて言うなら白内障の人は不自然に視力が出ないことが多いので、そこから類推することはあります。
長く視力検査をやっていると、経験的に検査のかなり序盤で、この人はこの辺りの度数が最適だろうという予測が立つようになります。なので、普通は度数を入れて全く視力が上がっていかないという事態にはならないのですが、白内障を始め眼病を抱えている人はこの予想に当てはまらないことも多いのです。
実に眼鏡屋泣かせですが、逆に言えばそこから何かしらの疾患を推測できる事もあるかもしれません。

つまり眼鏡屋でも発見の可能性がないではないですが、それ目的で訪れるのは避けた方が良いでしょう。やはり、疾患のことであればお医者さんが間違いないですよね。

 

まとめ

長くなりましたが、白内障に関してどう向き合えばいいかを纏めてみましょう。

□行動は早いほど選択肢が増える

□怖がって何もしないことこそが一番危険

□手術自体は今やかなり安全

□メリットデメリットを把握する必要はあるが、手術後の見え方はかなり快適になる

 

白内障で起きる水晶体の濁りは今のところ元に戻す方法がありません。一度なってしまった後は症状が進むのを止めることが出来ません。
しかし進行を遅らせることは出来ます。手術で負担少なく見えるようにすることも可能です。
眼病の中ではかなり対処しやすい部類だと言えるでしょう。

なので一番の対処法は、とにかく早めの検査を受けておくということに尽きます。
問題を手遅れになるまで放置さえしなければ、白内障はさほど恐れる病気ではないのです。