普段行く眼鏡屋さんの店員って大体勤続何年くらいだと思いますか?
JINSやzoffのように、新店舗だったり入れ替わりが激しくて若い人が多い場所なら2~3年くらいの人が目立つかもしれません。
老舗や個人店にいる年配の人は業界経験数十年という人もザラであるようです。
しかし、ちょっとやそっと経験を積んだくらいではカンタンには解決できない案件は結構存在します。
眼鏡業界もこれで相当奥が深く、『見たこともない事態』にわりと頻繁に見舞われるのです。
平気な顔でやっているように見せて、内心やっべぇと冷や汗をかきまくっている。
普段は決して表には出さないベテラン店員の焦りっぷりをご覧下さい。
※この記事はいち店員の感覚と偏見で出来ています。みんなそうだとは限らないですから悪しからず!
視力が出ない
世の中には眼鏡やコンタクトレンズをつけても、つまりどんなに強い度を入れても必要な視力が出ない人がいます。
これを弱視(ロービジョン)といいます。
原因は色々あって、水晶体や角膜に異常があったり、映像を伝える視神経や脳にトラブルを抱えている可能性もあります。
こういった方は、検査で視力の出る度数を導き出すのがとても難しいのです。
視力検査のスタートはオートレフを使うところから始まります。これは自動的におよその入れるべき度数が算出される機械で、検査の指針が決まる重要な要素。
ところが弱視の方の場合、このオートレフで全く数値が出てこないことがあります。
この時点でやな予感がビンビンです。
測っても測っても有効な数値が出てこない。
いくつか度を入れても変化がない。
なんなら近視か遠視かの検討もつかない。
マズイ、全然分からん。
焦る私。
しかしお客さんからは期待のこもった熱い視線。
その目が語りかけてくるのです。
―――できるよね?
―――ハイ(泣)
やるしかないとはこのことでしょうか。
こちらとしてもちゃんと見えて使いやすい眼鏡が完成するほうが嬉しいですから、必死こいて頑張ります。
なんとか今より少しでも視力を出せるよう奮闘している店員がいたら、温かく見守ってあげて下さい。
こちらより詳しい
たまに来店して印象深いのが、やたらめったら眼鏡に詳しいお客さんの存在。
同業者だったり自分でめちゃくちゃ調べてきたりと様々ですが、とにかくこだわるという点では一致する方達です。
眼鏡全体では負けませんが、その人が趣味にしている部分においてはまるで太刀打ちできないレベルの知識を持っています。
こちらが説明するまでもなく理解されていることが多いので楽といえば楽なんですが、その代わりこういった人は大概お話好きです。
これは知ってるかあれはどうなってるそれはどうすれば実現できると、その海より深い知識で私を攻め立ててくるわけです。
となるとこちらも負けてはいられません。
持てる限りの知恵と経験を総動員して、ボコボコにやり返してやろうと画策するのです。
え、やり返すなって?
無理ですよ。
だって悔しいじゃないですか。
こっちの土俵なのにイモを引けるわけがない。
これが完全に販売員失格な男の姿です。
いや、でも楽しく盛り上がれることがほとんどですよ。本当ですからね?
他にも、例えばカメラマニアの人はレンズに関してものすごく詳しいですね。
波長やプリズムの話なんて序の口で、光学中心にできやすいひずみとかヒトの目が受け取る光と脳の処理の相関とか、あなたそのまま眼科のお医者さんいけるんじゃないかという人もいるくらいです。
見たことも無いフレームを持ってくる
これらってなんだと思います?
そうですね、眼鏡です。
眼鏡と認めるには勇気がいりますがちゃんと眼鏡です。
世界にはこのような奇々怪々なメガネフレームが溢れていて、インテリアではなく常用している人も存在するといいます。
ここまでではないにしてもマニアックな造りの品をかけている人は意外といて、恐ろしい事にそれがお店に持ち込まれることがたまにあるんですよ。
そしてそんな見慣れないメガネに対して
修理をしてくれとか、同じ色に塗装できるかとか、ひん曲がった箇所を戻してくれとか。
ムーリー。
と言いたいのをぐっと堪え、フレームをチェック。
何処で作ったのか。
何の素材か。
何年経ったフレームなのか。
何一つ見当がつかない。下手したら軽く曲がりを戻しただけでボキリといく可能性もあります。
そしてそうなったとしてもレア品ゆえ代替パーツが用意出来ない。
この場合はそのままお返しするしかないです。
お客さんは泣きたくなりますよね。
実は店員も同じくらい泣きたいです。
というように、こだわりの眼鏡になるほど修理や調整が行いにくいといった弱点があります。ネジの規格ひとつ違うだけで、1分で終わる作業が1週間に伸びたりします。
メーカーがわかってまだ生産を続けているならまだマシな方で、気づいたら終売してたはよくある話です。
世界三大眼鏡生産国は、イタリア、中国、そして日本と言われています。あわせて全体の95%にも及ぶほどのシェアですが、いずれの国にもマイナーを突き進むメーカーは存在します。
その分魅力的な眼鏡も多いですが、多分に眼鏡屋泣かせであるとも言えるでしょう。