免許更新や健康診断で必ず行われる視力検査ですが、検査の方法は一律ではありません。5メートル離れたランドルト環の表を片目ずつ隠しながら見るのが定番ですが、最近多くなってきたのは設置してある機械を覗き込んでその中に表示される指標を見る検査です。
スペースの確保が容易なため病院などで採用されやすいのですが、実はこの方法は実際よりも視力が下がってしまう人が出やすいと言われています。
この記事はなぜ覗き込むタイプでだけ視力が落ちてしまうのか、その原因と視力低下を防ぐ方法を考えてみたいと思います。
あなたの視力を下げさせる『器械近視』
遠い位置を見る検査法ではしっかり見えていたのに、覗き込むタイプだとなぜかガクンと視力が落ちる…。
いつもなら見えるのにそんな判定をされてしまったら納得いかないですよね。ましてやそのせいで免許の更新に落ちてしまったり、会社から改善の指示を受けたりと実害も出かねません。
どうしてこんなことが起きてしまうかというと、眼に備わっている「調節力」がその大きな原因であると言えます。
調節力とは私達が近くを見ようとしたときに、通常遠くに合っているピントを手元に寄せてくる働きのこと。
この調節力がないと近くを見るときにボヤけてしまって非常に不便な思いをします(いわゆる老眼)。普段はとても大事な機能なのですが、この覗き込むタイプの視力検査では逆効果になる場合があるんですね。
この機械では覗き穴の中で光学的な調整をして中の指標が遠くに感じられるように設定されているのですが、技術的にまだ不十分なせいか指標の位置が遠くではなくもっと近くに感じてしまう人がいるのです。
よって近くを見るために眼の調節力が自動的に働き、一時的に「近くを見るための眼」になってしまうというワケ。近くを見るための眼で遠くを見ようとすれば、それは視力が出ないのも無理からぬことです。
これを専門用語で【器械近視】と言います。
器械のせいで一時的に近視状態(近くが見やすく遠くが見にくい)になっているよ、ということですね。
覗き込むタイプの検査のときだけ視力がいつも落ちてしまう人は、主に器械近視による余計な調節力の働きのせいであることが多いです。
調節力を働かせないために
視力検査時に本来の視力を発揮するためには、可能な限り余計な要素を排除する必要があります。
余計な要素とは、緊張している、眼に力が入っている、疲れている、調節力が働いてしまう、などのことですね。
こういった要素があると眼の機能を十全に発揮できなかったり良い視力を出すための妨げになったりします。
何はなくともリラックス
視力検査を受ける上でまず重要なのは身体の力を抜くことです。
スポーツをする時を考えればわかりやすいですが、緊張でガチガチでは体をうまく動かすことはできませんよね?モノを見るという行動も眼の毛様体筋を始めとした筋肉が関わってくるので、遠くにある(ように見える)検査のランドルト環にピントを合わせようとする眼の働きを阻害しないためにリラックスしておくというのはとても大事なことです。
病院や検査場という普段と異なる環境もそうですが、人によっては視力を出さなければ!と意気込んでいるせいで逆に余計な緊張を生みやすい状況であると言えます。特に小学生くらいのお子さんだとこの傾向は意外なほど大きく、普段視力1.0を見えている子が0.7とか0.5とかまで落ちてしまうことも少なからず起こるので注意しなければなりません。
検査を受ける前には気持ちを落ち着けて、深刻にならずに臨むようにしましょう。有名な筋弛緩法(一旦両肩をぐっと持ち上げてそのままストンと落とすようにする)なんかを直前に何回か行っておくだけで違いが出るかもしれませんね。
遠くにあると思いながら見る
近くを見ようとするときに自動的に働くのが調節力でした。
ならば調節力を働かせないために、見ている指標が遠い場所にあるようにイメージすることで脳を騙してしまいましょう。
意識して眼の筋肉自体を動かすことはできませんからなかなか難しい部分かもしれませんが、ここが検査場のテーブルの上ではなく奥行きのある空間を覗き込んでいて、そのずっと先に目標が見えているというイメージを行いましょう。
コツはややあごを引き気味にして気持ち上目で見ること。
人間は通常遠くを見るときに、あごを引いて視線を少し上に向けながら景色を見るようにできています。眼鏡を作る際もそれを考慮して実際の目の位置(アイポイント)より2mmほど上に最も歪みが少ない光学中心を持ってくるように加工するのですが、つまり検査時も上目を意識することで、脳が自動的に遠くを見ているんだなと判断して調節力を働かせない効果を期待できるのです。
まとめ
普段はよく見えているのに、この検査の時だけ見え方が悪くなったとしたならそれはこの検査が原因です。
決して急に目が悪くなったというわけではありませんから安心してください。よく見えているいつもの視力が、あなたの正しい視力です。
だから覗き込むタイプの検査で結果が悪かったとしても、あまり気にしないことです。免許更新の時などは視力検査に落ちただけならば同じ日に改めて受け直すことが可能ですので、この記事のやり方を参考に再挑戦してみてください。