眼鏡を超音波洗浄機に長時間かけないほうが良い理由って?汚れによって時間の使い分けが大事

超音波洗浄機って使った事ありますか?
自宅に持っている人は少ないかもしれませんが、眼鏡屋さんに行けば超音波洗浄機が置いてあって自由に眼鏡を洗うことができるようになっています(コロナで引っ込めた店も多いですが)。

洗浄機の横にやり方と洗浄時間が書いてあることが多いのですが、それを見る度いつも思っていました。

この時間、ちょっと長いような…?

もちろん眼鏡の状態や目的によって洗浄時間は変えて然るべきです。なのでここでは、
眼鏡を洗う際、どういった時にどの程度超音波洗浄機を使用するのが良さそうかを考えてみましょう。

 

浮かせて、剥がして、押し流す

超音波洗浄機の汚れを取り除く機能は、みっつに分けることができます。

 

①キャビテーション効果
水中で超音波をかけると細かい泡が生まれたり消えて弾けたりし、この時に発生する衝撃波がこびりついた汚れを破壊して浮かせる。

②加速度
とれやすくなった汚れ部分が、液体分子の振動により剥がれ始める。

③直進流
超音波によって起きる水流が、剥がれた汚れを押し流す。

 

つまり、汚れを浮かせてから剥がして最後には押し流す3段階を踏むことで、普通に掃除しただけでは取り切れない汚れを排除することが可能になっているわけですね。

眼鏡以外でも時計やアクセサリーなどに使うことが可能。あ、でも眼鏡屋さんに置いてある洗浄機は衛生上の問題で眼鏡専用となっているので他の製品は入れないようにしてくださいな。

 

フレームの状態で洗う時間を変えよう

 

さて、実際に超音波で洗浄することを考えましょう。

清掃目的の洗浄はせいぜい30秒~60秒で十分

洗浄機の説明や各種サイトの解説を見ると、90秒はやりましょうとか180秒が基本ですという風に書かれています。

しかし、本当にこんなに洗浄時間が必要でしょうか?

90秒はまだしも、180秒なんてやってみるとかなり長いですよ。

眼鏡を超音波洗浄機にかけると、丁番周りについた汚れやレンズと眼鏡枠の中に入り込んでいた汚れが水中に染み出すように取れてきます。でもそれはせいぜい1分ほど行えば大体止まりますし、その頃にはフレーム全体に張り付いていた汚れも超音波効果によりはじき出されているはずです。

今まで何百もの眼鏡を超音波洗浄機で洗ってきましたが、その経験を踏まえても、眼鏡を超音波洗浄機で洗う時間は『30秒~60秒』でOKです。
それ以上はむしろ後述するデメリットのほうが目立ってきてしまうんじゃないでしょうか。

特に超音波洗浄機をご家庭に持っている人は頻繁に洗浄を行うでしょうから、それこそ短時間で十分と言えます。
特に洗浄の様子を見るのが好きで毎日眼鏡を洗浄機に入れてる人がいるみたいですが、傷みが進みすぎないように気をつけてくださいね。

長時間必要になるときもある?

まあそうは言っても、30秒で問題ないのはそこまで派手に汚れていない眼鏡に限ります。

買って1~2年以上経っていると、人によっては仕事の環境が過酷で汚れが沢山ついているとか、汗っかきでリムの隙間にどんどん汚れが流れ込んでしまうなどの状況が有り得るので、その場合最初の1回は規定通りしっかり洗うことをオススメします。
そしてその時にもう汚れが染み出してこないよう一端綺麗にしてしまえば、次回以降は1分以内の短時間で済むようになるはずです。
(まれに買ってから何年も経っていて、一度も洗ったことありません緑青や皮脂汚れ凄まじいですみたいなフレームをお持ちになる方がいます。洗浄機が一発で真っ暗に染まるレベルなので、汚れが出てこなくなるまで何分でもやるべきでしょう)

殺菌目的なら意味はある

汚れ落とし以外の効能として、超音波洗浄は眼鏡にくっついている細菌の細胞膜を壊して殺す効果が期待できます。

除菌効果試験結果

超音波洗浄時間大腸菌黄色ブドウ球菌
0秒7.1×1063.2×106
30秒1.9×1036.1×105
60秒3.5×1024.5×102

出典:財団法人千葉県薬剤師会検査センター試験結果(平成11年1月22日)

このように調査によると、
大腸菌が710万→1900350
黄色ブドウ球菌が320万→61万450 という変化を見せています。

最初に付着していた大腸菌や黄色ブドウ球菌が、超音波洗浄をかけ続けることで激減していくのがわかりますね。

それぞれ日常的に触れる可能性があり厄介な感染症を引き起こす細菌ですから、殺菌をする目的であればしっかりと時間をとって超音波にかけるのは大いに意味があります。
ただ毎回そうするべきかは使用する方の判断次第です。大量の菌が毎日必ずつくような環境はあまりないと思うので、定期的に行うぐらいがいいのではないでしょうか。

 

必要以上に洗うと起こるトラブル

フレームの傷が広がる

超音波による洗浄は、キャビテーション効果による泡の破裂が第一段階でしたよね。
ここで問題になるのは、破裂によって起きる衝撃波が汚れだけではなく眼鏡本体にもダメージを与えかねないという点です。

仮に新品のフレームやレンズであればどうということはないのですが、眼鏡は長く使用していると微細なヒビや塗装剥がれが発生することがあります。普通に使っていればそれが大きな破損につながるのはもっと先なのでしょうが、超音波洗浄機にかけることでその速度を早めてしまうわけですね。

超音波洗浄をあまり多くやりすぎると逆に眼鏡の寿命を縮めてしまう確率は上がることでしょう。

レンズのコーティングが剥がれる

普通であればまず心配ないのですが、長期間の使用によりレンズが古くなり既に傷がついていたとか、一部にコーティングの剥がれがわずかにあったといった場合は危険です。
洗浄機の振動でその瑕疵からコーティングがどんどん大きく剥がれていってしまう可能性があるのです。

剥がれたコーティングはもう元には戻せません。ブルーライトカットや撥水コート、反射防止にキズ防止コートなどレンズにとって大事な防護膜を失ってしまうのでやりすぎには注意しましょう。

装飾品が取れてしまう

フレームによっては、テンプルなどに綺羅びやかな石飾りや細やかな装飾のビーズやブランドロゴをくっつけている場合があります。このパーツはあと付けでくっつけているので、超音波の振動で剥がれ落ちてしまう危険性が高いのです。ちょっとくらいの時間なら大丈夫かもしれませんが、時間が経ちすぎると危険かもしれません。

店舗でも飾りのあるフレームは基本的に超音波洗浄禁止。
それを忘れて、眼鏡を洗浄機に入れてぼーっとしていると気づいたら石が全部取れて踊っていた…なんてこともたまに聞く事例です。こういうフレームは価格の高いものが多いですし、みなさんもご自分でされるときは装飾がないか確認してから使用するようにして下さい。

錆びるのが早くなる

洗浄機に入れる頻度が高いということは、フレームが水分に触れる機会も多いということ。
つまり眼鏡自体が錆びやすくなってしまう危険を考えておかなければなりません。

水分をしっかり拭き取れていればさほどの問題ではないのですが、超音波洗浄機にかけた後、ネジの奥やレンズ枠の隙間をいちいち丁寧に拭き上げたりまではしないですよね?
これを繰り返すことで本来より錆びが発生しやすくなるかもということはぜひ意識しておきましょう。

 

まとめ

超音波洗浄機の効果と、長時間の洗浄によるデメリットを理解していただけたでしょうか。

眼鏡の普段の洗浄はそこまで神経質に行わなければならないものではありません。
レンズが汚れたらクリーナーでさっと拭き、そのついでにフレームも軽く拭いてあげれば多少の除菌効果も期待できます。そして、週イチとか月イチとか人それぞれのタイミングで超音波洗浄機を活用してあげれば、溜まった汚れが頑固にこびりつく前に除去できるのでバランスが良い使い方なのでないかと思います。