眼鏡における頂点間距離とは、目の表面(角膜)から眼鏡レンズの内側の面までの距離のことを指します。
この距離が遠いか近いかで、レンズを通した見え方にかなりの差が出てくることをご存知でしょうか。
目は視界の変化に敏感ですから、何らかの理由で今までと違う頂点間距離になった場合に「なんだか見え方が違う気がする!」となることは多いです。大抵はいずれ慣れてしまうのですが、人によってはそれが疲労や目の痛みにつながってしまうことも。
- 眼鏡を新調したけど、度数が同じなのになぜか違和感がある
- この前眼鏡をぶつけてから見え方がおかしい
- ずっと鼻パッドつきだったけど初めて一体型にした(またはその逆)
こんな状況に当てはまる人は、もしかしたら頂点間距離の調整を行ったほうがいいかもしれませんね。
というわけで、この記事では
・頂点間距離が変化すると眼鏡にどんな変化があるのか
・どのような調整を行えば快適な眼鏡になるのか
などを解説していきます。
今の眼鏡がなんとなくおかしいと感じる人はちょっとした調整で改善する可能性があるので、当てはまるかどうかを確認してみましょう。
頂点間距離が変わると何が起きる?
頂点間距離の違いにより起きる変化は以下の通り。
近視と遠視で全く逆の効果になる場合もあります。
頂点間距離が短い | 頂点間距離が長い | |
見え方 | (近視)強くなる (遠視)弱くなる | (近視)弱くなる (遠視)強くなる |
視野 | 広くなる | 狭くなる |
目のサイズ | 元のサイズに近くなる | (近視)小さくなる (遠視)大きくなる |
輪郭 | 元のサイズに近くなる | (近視)ヘコむ (遠視)飛び出る |
上2つは自分からの見え方、下2つは相手からの見え方ですね。
図を見ると分かる通り、頂点間距離が変わると様々な変化が起こっていることがわかります。
レンズとの距離が変わることで景色を屈折させる位置や長さや歪みの度合いが違ってくるため、その差を違和感として感じてしまうのでしょう。
その違和感は時間とともに慣れていくものですが、敏感な人などはその慣れるまでの時間が長くかかる場合もあります。影響が強く出るのなら無理をせず調整をお願いするべきだと言えます。
頂点間距離を長くすれば良いのか短くすれば良いのかは状況によって変わるため、目的に沿って動かしてもらうようにしてください。
次項でどんな時に頂点間距離を動かすことが多いのか、具体例を挙げていきます。
こんな時は頂点間距離を調整してみよう
新しい度数に慣れないとか、使っているうちに見え方の調子が悪くなってきたとか。
こういった際には基本的に度数を変えて対処することが多いのですが、「差が微妙なのでレンズ交換するほどじゃない」「レンズが高いのでなるべく変えずに済む方法がいい」といった場合は次善の策が「頂点間距離の調整」となるわけですね。
調整のシチュエーション
レンズを新調したがもう少しだけ見え方がよくならないか、同じ度数なのになぜかぼやける気がするなどの場合はレンズを目に近づけてあげると解決することがあります。
頂点間距離が遠いと、レンズ端の歪みが強い部分が視界にかかってきやすくなります。視線を頻繁に動かした時や大きく振り向いたときなどに気持ち悪く感じることもあるため、レンズを近づけるのも一考の価値ありです。
例えばそれまで鼻パッド一体型を使っていた人が鼻パッド付きに変更した場合(またはその逆)、頂点間距離が5mm前後変わるため違和感を感じやすくなります。なので以前の眼鏡の距離に合わせて調整すると良いかもしれません。
見え方とは違いますが、鼻パッドが低すぎると押さえがきかずにすとんと眼鏡が落ちてしまうことがあります。この状態はレンズまでの距離が遠く、さらに角度も強くつくため視界に悪影響が出やすいと言えます。
鼻パッドを立てて正規の配置にしておくほうが良いでしょう。
女性に多いのが、まつげが長くレンズに当たってしまうシチュエーション。
目が小さくなったり輪郭が崩れるのを嫌って頂点間距離を短くしてほしいとご希望の方がたまにいますが、あまりやりすぎると瞬きのたびにまつ毛がレンズをこすって、汚れたり傷ついたりします。この時は最適なポジションはでは少なくとも頂点間距離を長くします。
「ずっと使ってる眼鏡だけど最近なんだか見え方がおかしい」という訴えを受けた場合、レンズの劣化による性能低下の他に、フレームの歪みから起こるレンズ位置の変化を疑います。
特に最近眼鏡をぶつけたりして鼻パッドがいつの間にか曲がっているというのはよくあるパターンで、そのせいで頂点間距離が変化してしまっているというわけですね。なので、最近なぜか違和感が出るようになったと感じる人は鼻パッドが変に曲がっていないかちょっと見てみましょう。(もちろん度が進んだなどの可能性もあります)
頂点間距離とは少し違いますが、遠近両用メガネは度数設定の他に累進帯長やBT、つまりレンズのどの高さで見るかも重要なポイント。
例えば手元が見づらいのならば、鼻パッドを調整してレンズを上に持ち上げることで手元の度数がしっかり視界に収まるようになります。遠くが見づらいなら逆に下げるわけですね。
鼻パッドの調整は自分でして大丈夫?
はっきり言うと、自分で行うのは全くオススメできません。
出来るか出来ないかで言えば決して無理ではないのですが、単純に鼻パッド調整というのは破損の危険性がかなり高いからです。
我々店員でも鼻パッドをいじるときはかなり気を使います。全体的に細い針金のようなパーツで構成されているため、下手に力をかけるとすぐに折れるかロウ離れしてしまうんですね。
しかもS字のようなカーブを描いているため、どの部分を曲げたらいいか、どこをどう直したらいいのかが分かりにくい。
踏んづけて潰してしまったのを指でぐいーっとしたらすぐ戻ったよなんて言う人もいますが、何割かの確率でボキッといくので本当にやめたほうが良いですよ!破損したら修理もしにくい部位なため、運が悪いとフレームごと交換になります。
合わせて知りたいフェイスプロフィール
フェイスプロフィールとは、眼鏡をかけた時の個人個人の装用データのこと。
主に眼鏡で使われるのはみっつで、
頂点間距離
前傾角
そり角
で表されます。
頂点間距離は目とレンズの距離(平均12mm)。
前傾角は眼鏡をかけた時のレンズの傾きの角度(平均10°)。
そり角は完成した眼鏡を上から見た時に、左右のレンズが水平180°からどれだけ傾いているか(平均4°)。
メガネのプリンス
仮に同じ眼鏡をかけたとしても、人によってそのかかり方は様々。
鼻が高い人は頂点間距離が遠くなりますし、耳の位置が上に来る人や鼻眼鏡風にかけるのが好きな人は加えて前傾角が深くなります。
スポーツタイプに多いのはフレームカーブが強く顔のラインにピッタリ沿うそり角の強いフレームです。
通常眼鏡は平均値を想定して作られているで、頂点間距離も前傾角もそり角も平均な人が最も見え方が良いといます。
つまりこれらの数値が平均から外れるほどに、レンズの見え方がベストから遠くなって歪んだり視力が落ちたり疲れやすくなるというわけですね。
ちなみにレンズの中心部分はそうでもないですが、周辺部にその傾向が顕著。
さらに球面度数が強い人ほど、また乱視がある人ほどこの影響を強く受けます。
また眼鏡をかけ変えた時に、前傾角やそり角もそれまでの数値と大きく変わると違和感を感じやすいので注意しましょう。
オーダーメイドレンズで最高の視界を
顔かたちによって、あるいは選ぶフレームによっては装用データが平均からどうしても遠くなってしまう場合もあるでしょう。フレームの調整ではカバーしきれないケースも出てくるかと思います。
そんな時は、一度『individualレンズ』を使用してみるのはどうでしょうか。
individualとは個々人のフェイスプロフィールに合わせて設計できるオーダーメイドレンズのことです。
「この人がこの眼鏡をかけると位置と角度になるのか、それじゃあそのポジションで一番見え方が良くなるように最初から光学的に設計してしまおう」ということをやるんですね。
【シーマックス】
【ロハス10、ロハス100】
【ホヤラックスRSi、MSi】
【ホヤラックス極、雅、望、紬】
【AC-X】
【スペリオールPX】
などがindividualレンズです。
これらのレンズを選ぶと、まさに頂点間距離をはじめ前傾角とそり角、他にもフレーム側のデータを取ったり遠近なら近間の作業距離を設定できたりと、とにかく視界の改善のために細かな情報を取り込んだレンズを作成することが出来るのです。
例えば、今の眼鏡だと目が疲れて頭痛がしやすいとか、乱視が-2.00D以上あるとか、フレームの曲がりが強く6~8カーブあるなどする際は費用相応の効果を発揮してくれるので試す価値ありでしょう。
まとめ
このように眼鏡にとっては誤差程度の頂点間距離の変化でも、身体にとっては看過できない差を生むことがあります。
違和感を感じて来店される方に聞いてみると、「だいぶ前から気になってたんだけど気のせいかなと思っていてすぐには来なかった」という言葉がよく出てきます。
言葉には表せなくても感じ取った違和感は大事なものですから、放っておかずに早めに眼鏡屋さんに行ってみましょう。
少しばかり調整するだけで不満が解消できるのなら、試してみる価値はあるはずです。