視力の左右差は矯正するべきしないべき?その判断基準はこれだ!

人間は左右の目を両方使ってものを見ます。従ってその左右の視力はなるべく揃っていたほうが都合が良いのですが、実際ぴったり視力が揃っている人のほうが稀です。
微妙にズレていたり、大きく違っていたり、片方だけ乱視があったりと人によって視力差は様々。

でも視力検査で左右の視力が違うと言われたら少々不安に思ってしまう人も多いんじゃないでしょうか。

なので、「視力の左右差が発生した時、それを矯正する必要がどれだけあるのか?」という疑問にこれから答えていきたいと思います。

さきに端的な結論だけ書くと、

『可能なら視力は揃えたほうが良いが、無理をしてまで左右を合わせる必要はない』

という答えになります。

これが一体どういう意味なのかや、他にも

  • 視力が違うとどんな影響があるの?
  • 眼鏡を新しくしたのに左右の見え方が違うのは問題ない?
  • 眼鏡をかけると違和感や気持ち悪さがあるけどこれって左右差のせい?
  • どれくらいの視力差なら許容範囲?

こんな状況や疑問への答えをわかりやすく説明しているので、左右の目の視力差に気づいて心配になった人はぜひ最後までチェックしていってください。

 

不同視のままだと考えられる影響

記事の冒頭で視力はなるべく揃っていたほうが都合が良いと書きました。

その理由として、左右の視力が違う(不同視)とそれぞれの目から入ってくる映像情報に差が生まれ、それを受け取る脳がうまく情報を統合できずに様々な悪影響が出てくることが考えられるからです。

目が疲れやすくなる
景色に歪みを感じる
視界が大きく動くと気持ち悪い
遠近感が取りにくくなる
頭痛や肩こりに見舞われる

こういった症状が現れたなら、視力の左右差が原因である可能性があります。

よって裸眼もしくは眼鏡やコンタクトレンズをつけた状態でも左右差が残っている場合は、可能なら視力を揃えてあげる方向に向かうほうが良いと言えるでしょう。眼科や眼鏡屋も、基本的には右目と左目の見え方が同じになるように度数処方を行います。

特に視力が右目1.0で左目0.6などのように、差が0.4以上開いているとヒトの目は両眼視をしにくくなる傾向があります。前はそうでもなかったのに最近差がそれだけつくようになったという人は注意したほうがいいかもしれません。

 

視力差は必ず矯正しなければいけないわけではない

しかしだからといって、どんな場合においても視力を揃えたほうが良いとは限りません。

どれくらいの視力差なら許容範囲かという基準は正直ないため、個人個人のシチュエーションで必要な度数を考えていく必要があります。
人によっては矯正の度合いを抑えたり、もしくは全く行わないほうが良い場合も有り得ます。

視力を揃えるのにかなり強い度を入れる必要がある

例えば検眼を行っているとよくあるのですが、片方の目だけ度数を入れていってもなかなか視力が上がらず、よく見える目と同じだけの視力を確保しようとするととんでもない度数を入れるハメになる、といったパターンに遭遇することがあります。

これを実際にやってしまうと、見えるは見えるのですが、それまでの見え方とあまりにも違うせいで非常に目に対する負担が大きくなります。有り体に言うと目も頭も痛くてその眼鏡をかけてられないレベルになる確率が高い。
せっかく左右を揃えたのに別の問題が発生してしまっていますね。なのでムリヤリ視力を揃えることはあまりオススメできることではありません。

目安として、現用との差(裸眼or今使っている眼鏡と新しく作る眼鏡との度数差)は
低度数であれば4段階以内(1.00D)
高度数であれば8段階以内(2.00D)
に抑えるべきと言われています。低度数と高度数の境は考え方によりますが-5D前後あたりと思っていてください。

つまり見にくい方の目が現用-3.00Dのレンズを使っている場合、いくらもう片方の目と同じ視力を確保したくても、-5.00Dとかを入れてしまうと長時間かけるのが難しい眼鏡になりやすいわけですね。
この場合は、無理のない範囲で左右の見え方を近づけていく形になります。検眼時にテストレンズをやや強い度数から入れて、目がきつくないかとか気持ち悪くなりそうかなどのチェックを行いながらちょうど良く使える度数を探っていきます。結果として左右の度数差がある程度残るかもしれませんが、強引に揃えるよりは悪影響が小さいのでそこまで心配はいりません。

もともと左右差に慣れている人

前述の通り、視力の左右差があるせいで身体の調子がおかしくなる人がいます。
しかし逆に、長い間左右差がある状態を過ごしてきたせいで、それに慣れてしまっていて改めて左右の視力を揃えるほうが違和感を感じてしまう人もいるのです。

このケースではあえて左右差を調整しないことがあります。

明確な基準があるわけではないのですが、少し極端な事例として現状の視力が
右1.2 左0.5
右0.7 左0.2
このぐらい違っているなら私は無理に揃えようとはしません。よく見える方の目で必要なだけの視力を確保して、もう片方をある程度寄せていく感じにするでしょうか。最終的に視力を揃えたい事情があったとしても、もともとの差が大きければ一度の処方で行わずにそれなりの期間を開けて段階的に視力を寄せていくべきです。

さらに言うなら、このように視力差が大きい人は遠距離と近距離を見るときの目を使い分けていることが多いです。先程の例ならば遠くを眺める時は右目を使い、近くのスマホや本を読む時は左目が主体になるといった具合。
これを『モノビジョン』と言います。

正常な両眼視をしていた人がモノビジョン状態になると多くの人は慣れずに不調を訴えますが、若い頃から左右差が徐々に広がっていってこの状態に慣れちゃった人はこれがデメリットになりにくいのです。
むしろ左右で違う距離に対応できるため、年齢を重ねて老眼が進んでしまってもそれぞれの目で遠近両方の距離をカバーできるので視力矯正を必要としない人すらいます

子供の不同視は放置すると悪影響が大きい

例外として、小さい子供の不同視はきっちり矯正しておいたほうが良いことを付け加えておきます。

子供は最初は遠視で、そこから眼球の発達に伴って正視に移っていくわけですが、お子さんによっては何らかの理由で最初から視力に左右差がある場合があります。
これを放置すると、見えていない方の目の発達が阻害されるため弱視になりやすくなります。そもそも子供の遠視自体を放置してはダメなのですが、左右差もなるべく最小限に抑えなければいけません。

また、子供は五感全てで受ける外界からの刺激で脳が育っていきます。つまり片目が見えにくいままだとそちらから受ける刺激が減り、脳の発育に悪影響が出かねません。目と脳は交叉しているため、右目弱視なら左脳が、左目弱視なら右脳に影響が出やすいです。

この場合の治療は早ければ早いほど効果が高いので、お子さんの左右差に気づいたらすぐに病院へ連れていきましょう。斜視や弱視は3~4歳を過ぎると効果が薄いなどと言われることもありますが、不同視弱視など、症状によっては小学生に上がった後でも決して手遅れではないので諦めずに受診してください。

 

違和感の原因は左右差ではないかも

ひとつ注意点として、何かしらの不調があったとしてもその原因が左右差だけにあるとは限らないことは覚えておきましょう。

  1. 視力の左右差(前項までで説明)
  2. 現用との度数差(前項までで説明)
  3. 左右レンズの度数差
    【右-2.50D、左-5.00D】など、右と左のレンズの度数差が2.00D以上あると違和感を覚えやすくなると言われています。このレンズを入れた結果両方とも視力が1.0になったとしても、レンズ度数がこれだけ違うと片方だけ像が小さく映ったり、視線をずらしたときにプリズム差が生まれてものが二重に見えたりします。
  4. 斜位
    片方の視力が強いとそちらばかりで景色を見るため、残った目が正面を見ることをやめてしまい斜位の症状が出る場合があります。一旦そうなった後で両眼視をしようとすると、視線を合わせるために目の筋肉を多く使う必要があるため疲労しやすくなります。
  5. フレームやレンズの形状
    眼鏡を新しくした際は、視力や度数以外にフレームの形にも気を配ると良いかもしれません。
    たとえば以前の眼鏡と比べてレンズサイズが大きいと、レンズ端の歪みが大きく出やすいのでそれを敏感に察知して見え方の調子が悪いと感じる人がいます。鼻パッドの高さの違いによる目とレンズまでの頂点間距離の差も見え方に影響を与える可能性があります。

ざっくり並べてもこういった原因が考えられます。

度数の修正に関しては、これらのことを複合的に考えて判断するので一概にどこが原因とは言いにくいのが難しいところですね。

 

まとめ

結論として、左右差の矯正をどれだけ行うべきかの判断は、今現在において左右差が原因で見え方や体調にどれだけ不調を感じているかを基準にすると良いでしょう。

現状が辛ければ対処するべきですし、全く問題がないのなら現状維持で構わない可能性もあります。
途中で述べた視力が0.4以上違うと両眼視しにくくなるという話も、逆を返せば両眼視をするために頑張って両目のピントを揃えなくてよいため、それぞれの目にとってはラクに過ごせているという考え方もあるわけです。

もしあなたの視力に違いがあったとしても無闇に心配することはありません。
眼科や眼鏡屋に今までの状況をしっかり説明して、本当に矯正が必要かどうか判断してもらってください。