眼鏡レンズの素材2種類、あなたにオススメなのはどっち?

眼鏡において最も重要なもののひとつがレンズの素材です。
大きく分けて眼鏡レンズ素材は『プラスチックレンズ』と『ガラスレンズ』に分かれるのですが、皆さん眼鏡を選ぶとき自分にはどちらが合っているか考えて買っていますか?

ぶっちゃけあまり意識しないですよね(笑)。

まあはっきり言うと今現在主流になっているのはプラスチックです。20年以上前はガラスが多かったのですが、今やプラスチックレンズの使用率は(統計により多少前後しますが)大体90%台後半というのが共通した数字。私の感覚でもそんなものですね。

使いやすさはプラスチックに軍配が上がるのは間違いないでしょう。

しかしその反面、ガラスレンズを使用している層が確かに残っているのも事実。特に昔からガラスレンズを使ってきた人は、頑なにプラスチックに移行せずガラスレンズを使い続けている場合が少なくありません。
つまり現代のレンズ性能や生活環境においても、プラスチックとガラスどちらにも有効となるシチュエーションがあるということなのでしょう。

この記事では、そんな人達の「プラスチックorガラスを使う理由」を集めてみました。
プラスチックで問題ないなと再確認するもよし、ガラスの優位性を知って選択肢を広げるもよし、あなたの現在の状況と照らし合わせてレンズ選びに活かして頂ければと思います。

 

プラスチックとガラス、性能が高いのはどっち?

まず単純に両者の性能を比較してみましょう。
眼鏡のレンズに求められる能力は様々ありますので、それぞれのメリットデメリットを把握しておいて下さい。

プラスチックガラス
扱いやすさ
レンズの薄さ
レンズの軽さ
レンズ表面の傷つきにくさ
レンズの頑強さ
レンズの透明性
耐熱性
フレームの選択肢
バリエーションの豊かさ
最新技術の導入性

こういった性能差は、眼鏡レンズ素材の3要素の呼ばれる『屈折率、比重、アッベ数』や、素材の強さと柔軟性にそれぞれ特徴があるためです。

その辺を含めてそれぞれを少し掘り下げて解説していきましょう。

プラスチックとガラスレンズの性能比較

【レンズの薄さ】
ガラス>プラスチック
プラスチックレンズにしろガラスレンズにしろ、それぞれ『屈折率』という数値が違う何種類かのレンズが用意されています。どちらの素材を選んでも屈折率が同じなら厚みはほぼ同じで、単純に屈折率の数値が大きいほうが薄くなります
それぞれの種類としては
プラスチック=1.50~1.74
ガラス=1.50~1.90
となっていますので、とにかく厚みを減らしたい場合はガラスの1.80や1.90を選んでいくことになります。
【レンズの軽さ】
プラスチック>>ガラス
同じ量の蒸留水と比べて何倍重いかを表す『比重』は、主なものでプラスチックが1.30~1.47に対してガラスは2.41~3.99。つまり比べると、ガラスよりプラスチックのほうがずっと軽いです。
お客さんからガラスレンズの眼鏡が持ち込まれた時、手に持てば大体一発で「ああこれガラスだな」とわかるくらいには差が出ると思って下さい。特にレンズサイズの大きい眼鏡を使うと顕著です。
【レンズ表面のキズのつきにくさ】
ガラス>>プラスチック

眼鏡を長く使っているとレンズ表面は段々擦り傷のようなものがついてきますよね。
主に眼鏡を繰り返し拭くことで発生する避けられない傷ですが、これに関してはガラスが強いです。

プラスチックレンズも傷防止用のコーティングをつけて傷つきにくくすることは可能ですが、それを計算に入れてもガラスのほうがかなり上。

【レンズ自体の頑丈さ】
プラスチック>>ガラス

表面のキズではなくレンズ自身の壊れにくさという点で見ると、こちらはプラスチックが圧倒的に頑丈です。
というかガラスが割れ易すぎる…。うっかり落としたりフレームに圧がかかったり足で踏んづけたりするとカンタンにパリンパリンします。

セルフレームでガラスレンズの交換をするときは、プラスチックのように普通に指でレンズを押し出そうとするとかなりの確率でぐしゃっと粉々になるレベルですから、ガラスレンズは取り扱い要注意です。

【透明性の高さ】
ガラス>プラスチック
レンズを通して見た景色というのは、多かれ少なかれ色滲みを起こします。その程度を示すのが『アッベ数』で、その数値が大きいほうが色滲みは少なくクリアな見え方。アッベ数の大きいガラスレンズ好きの人は景色がキレイ明るくに見えると口を揃えるため、人が体感出来る程度には違いがあると言えます。
傷がつきにくいことも相まってその能力が長く保たれるという点も注目すべきポイントです。
【耐熱性】
ガラス>>プラスチック
眼鏡を買うと、「フレームもレンズも熱に弱いから注意してくださいね」と注意喚起されることが多いんじゃないでしょうか。
特にプラスチックレンズは熱が超弱点で、熱いシャワーやドライヤーを数十秒当てるとコーティングが引き伸ばされるクラックがあっという間に発生します。その点ガラスならその心配は少なく、そういった環境では大活躍するでしょう。

フレームの選択肢
プラスチック>ガラス

レンズをはめ込むフレームについても、ガラスレンズの場合は制限がかかる事が多め。
例えばナイロールやツーポイントのように溝を掘ったり穴を開けようとすると、ガラスは割れてしまうため使用不可となっています。またガラスのプリズムレンズはプラスチックと少し設計が違い、レンズを少しずらしてはめ込む形になるためレンズ径が足りずに作れなかった、といったことが起こりやすいです。

【レンズバリエーションの豊かさ】
プラスチック>>ガラス
眼鏡のレンズは普通のクリアレンズの他にも、カラーレンズや調光偏光レンズ、ハイカーブレンズ、オリジナルカスタムレンズ(個人個人に合わせて設計するレンズ)など様々な種類があります。
この種類において、プラスチックレンズはガラスの数倍~十数倍の選択肢が存在。眼鏡購入時になにかしらの細かい要望を出された場合、プラスチックならどうとでもなるのにガラス希望になった途端に頭を抱えるというのが眼鏡屋のよくある風景だったりします。
【最新技術の導入性】
プラスチック>>ガラス

レンズは中心部に比べて周辺部が歪んでしまうという宿命があります。

特に遠近両用で問題になりやすいのですが、この歪みをいかに減らして視野を確保するかというのがレンズメーカーの課題であり、日々新しい技術が開発される分野でもあります。
ただやはり加工のしやすさに大きな差があるからか、こういった最新技術が導入されるのは主にプラスチックレンズ。ガラスレンズがその恩恵を十全に受けられているかというと疑問符がつくところです。

ここまでを総括すると、扱いやすさはやはりプラスチック>ガラスとなるかと思われます。
しかしガラスレンズはプラスチックより劣っているというよりは、得意不得意がハッキリ分かれているレンズだと考えるべきでしょう。つまり特定の状況で困った事態を解決したい、という際に選択されるのがガラスレンズであると言えます。

 

シチュエーション別オススメ素材

ここまで読んで、あなたにオススメのレンズがどちらか何となく見えてきましたでしょうか。
最後に、こんな人はこちらの素材を選ぶのがオススメだよ!というシチュエーションを紹介していきましょう。

プラスチックレンズがオススメな人

眼鏡をかけるときにストレスを感じたくない

耳や鼻が痛くなるのがイヤ、という人はプラスチックでしょう。
ガラスレンズはどうやっても重くなるため、鼻に跡がついたり耳に慢性的な痛みが出やすいと言えます。

安く買いたい

価格に関しては間違いなくプラスチックです。
今やフレームを買うとレンズもセットでついてくる時代。良心的なお店は高屈折率のものも無料でつけてくれたりしますが、それらは全てプラスチックレンズとなっています。ガラスレンズを選べるお店でも、同ランクのガラスを入れようとすると数千円~一万数千円高くなる可能性があります。

なるべく多くのカラーから選びたい

レンズに色を入れてサングラスとして使いたい、偏光レンズや調光レンズを使ってみたいといった場合、色の種類はプラスチックレンズのほうが圧倒的に多いです。正直ガラスに関してはグレーとブラウンがほとんどで、濃さも細かく指定できなかったりと散々なのでオススメできません。

単焦点or遠近でレンズの歪みを抑えたい

頂点間距離・前傾角・そり角を計測してレンズの見え方を改善するオーダーメイドレンズや、遠近両用の視野を狭くさせる歪みを大きく抑える両面設計などのハイグレードレンズを選べるのはほぼプラスチックレンズです。年々進化する高機能レンズを追いかけるならプラスチック一択ですね。

特にこだわらない

上記までとは逆に、レンズに対して全然こだわりがない場合もプラスチックで問題ないとも言えます。
値段も安く使いやすいため、年齢が若いとか度数が弱いとかすぐ度数が変わりそうとか安いレンズを使い潰す気でいる人とかはプラスチックがベスト。

レンズが見えにくく感じることがある

外部から光を取り入れる機能が低下した年配の方が重宝しているイメージですね。透明レンズのままで視認性を上げたいなら試してみるのも良いかと思います。「傷がつきにくい=光がレンズ上で乱反射せず見やすい=眼精疲労を起こしにくい」メリットも押さえておきたい部分。
ただ若い人はぶっちゃけ差を感じないという人が多いかも。

一本の眼鏡を長持ちさせたい

一般に眼鏡レンズの寿命はプラスチックが2~3年前後、ガラスレンズが5年前後と言われています。
販売員としての体感ですが、実際に皆さんが交換に来るタイミングはプラスチックは丁度そのくらい。でもガラスレンズだと10年以上使い続けている人が珍しくないイメージなんですね。度数が変化するかもという懸念はありますが、眼鏡を大事に長期間使いたいならガラスレンズは一考の余地アリと言えます。(ガラスの交換は傷というよりは黄色く変色してしまって、となることが多いです)

高熱にさらされることがある

眼鏡をしないとお風呂に入れない人は、お風呂用眼鏡を使うか、プラスチックレンズを一定期間で使い捨てるか、ガラスレンズを使用するといったあたりになるんじゃないでしょうか。
この中でガラスレンズは風呂の外でも同じ眼鏡をかけられるため、眼鏡を複数用意しなくていい点がメリットです。

仕事場の環境が過酷

例えば店舗のお客さんで、溶接工や旋盤工など仕事場の環境が過酷でレンズが半年~1年でボロボロになるような人がたまにいるのですが、そういう人に現在販売しているプラスチックレンズ最高クラスの傷防止コートを入れてもあまり変わらないことが多いです。
傷で見え方が悪化すると仕事には致命的ですから、ガラスレンズ案件ですね。

神経質な人

これもたまに見かけるパターンなのですが、眼鏡レンズの汚れが少しでもつくとすぐにメガネ拭きで拭きまくる人がいます。むやみに一日で十回以上拭いている人なんかがこれに当たります。まあ、神経質というか潔癖症というか。
もちろんキレイにすることは良いことなのですが、眼鏡の寿命は=レンズ拭きで拭いた回数みたいなところがあるため、プラスチックレンズであまりに頻繁にやりすぎるとかなり早くレンズがダメになってしまうんですね。どうしても汚れが気になってしまってー、という人はガラスレンズにすれば大分改善するので試してみてもいいんじゃないでしょうか。