野外活動に非常に役に立つ調光レンズ。利用者も急激に増えていますが、悩みの種は劣化によるレンズの寿命があることではないでしょうか。
決して安い買い物ではないので、なるべくなら長持ちさせたいところ。
しかし実際の使用者の話を聞いていると、それって寿命を縮めてない?という使い方をしている人が結構見受けられます。
この記事では少しでも劣化を抑えて長く使えるよう、調光レンズとの付き合い方を解説していきます。
もうかけている人だけでなく、これから使ってみようか悩んでいる人も参考にしてみてください。
調光レンズとは
太陽光に含まれる紫外線に反応して色が変わるレンズのことを指します。
そしてそのレンズを加工してフレームにはめ込んだものを調光眼鏡、あるいは調光サングラスと言います。(紫外線ではなく光の明るさに反応する調光レンズも存在→エクストラアクティブ等)
太陽から降り注ぐ光は私たちに欠かせないものですが、その中には浴びすぎると人体に害を与える光もあるのはご存知の通り。
それを防ぐためにはサングラスが最適なのですが、一日中ずっとサングラスをしている訳にもいかないですよね?
そういった方は調光レンズを試してみましょう。
家から外に出ると、透明だったレンズがみるみるうちに色がついてサングラスに大変身。大体1~2分でそれなりの色に変化します。
その後また室内に入ると数分かけて徐々に色が抜けていき、普通の眼鏡として使えるようになるのが調光眼鏡です。
通勤やスポーツ、レジャーでの眩しさや紫外線はバッチリ防ぎたい。でも別に眼鏡を用意するのは手間だし、忙しいさ中にいちいち掛け換えをしたくないし、持ち運びにも困る。
そんな人のためのアイウェアと言えるでしょう。
使い方で変わる調光レンズの寿命
では本題です。
非常に便利な調光レンズですが、困ったことにレンズ自体に寿命が存在します。
素材や使い方である程度左右されるのですが、一般的に十分な機能が維持できるのが2~4年程度と言われています。
寿命が近づくとどうなるかと言うと、
- 色が購入当初ほどは濃くならない
- ついた色が完全には戻らなくなる
といった状況が発生します。
つまり、最終的にそれほど濃くも薄くもない中間的な色に落ち着いたサングラスが出来上がるわけですね。
出典:Ito lens
写真で言うと、真ん中からやや左寄りくらいの色に黄色が混ざるようなイメージです。
1~2年で機能の変化を感じるようになり、2~4年で色が濃くならず不足を感じて買い替えを検討する、という流れが一番多いかもしれません。
随分寿命に差があるんだなと思いましたか?
これは偏にサングラスの管理の仕方で変わると言えます。
お店のお客さんを見ていても、毎日雑に使いまくっている人ほど明らかに劣化は早いです。平日も休日もずっとその眼鏡をかけていて、その分扱いも適当になっていて、気付いたら劣化が進んでしまったパターン。
逆にあまり使わずにずっとしまってあったという場合は、何年経ってもさほど機能を損ねることもなく綺麗に発色することがあります。
もちろんせっかく買った調光レンズを使わないのは本末転倒なので、ちゃんと活用しながら劣化を抑える方法を考えてみましょう。
仕組みから見えてくる寿命の伸ばし方
現在眼鏡レンズに使われる素材はふたつ、プラスチックとガラスです。
プラスチックは軽くて加工しやすいけれど傷や熱に弱い、ガラスは頑丈で熱をものともしないけど重くて割れやすいといった特徴があり、調光レンズとしても仕組みに差異が存在します。
プラスチックはレンズ表面に感光物質をコーティングしてあるタイプ。
紫外線が当たるとこの物質自体が変化を起こし、レンズに色がつきます。どの色に変わるかは感光物質により違うので、染めたい色に対する物質を使用します。
例えばスピロオキサジンという物質は無色ですが、紫外線と反応して青色に変化。その後紫外線の当たらない場所へ移すと元の無色に戻るので、爽やかなブルーカラーの調光眼鏡を作るならこの物質でレンズをコーティングする形になるでしょう。
調光レンズが通常の染色に比べてカラーバリエーションが少なめなのは、この感光物質の種類がまだ多くないからですね。
もうひとつ、ガラスの調光レンズは酸化銀やハロゲン化物から作られるハロゲン化銀がレンズに練り込まれているタイプ。
このハロゲン化銀は無色透明なのですが、紫外線を当てると銀とハロゲンに分解されます。このうちの銀が目に見える光を通さないので、結果として黒い色に変化するというわけです。
つまり素材に含ませた物質を紫外線によって変容させることで、一枚の中に複数の役割を持たせることが可能になったのが調光レンズとなります。
最大の要因は紫外線に当たる時間
劣化後の最終段階として中間色になるということは、上記の成分変化を繰り返すうちに段々と結びついたり離れたりする力が弱まり、変色の途中段階で落ち着いてしまったということが原因と言えます。
ということは、調光レンズの寿命を伸ばすために最も重要なのは変色回数をなるべく減らすということで間違いないでしょう。
でも先程も書いた通り使わないのは意味が無いですよね。
なのでここは「必要のない変色をさせない」を重点に置いてみましょう。
サングラスを使う方で多いのが、ケースにしまわずにずっと出しっぱなしにしていることです。
普通の眼鏡はしっかりケースに入れる人でもサングラスと思うと感覚が違うのか、その辺にぽーんと放り投げてあったり胸のポケットに引っ掛けたまま行動したり車の中に置きっぱなしにしたりを行いがちです。
調光レンズは少しでも紫外線があれば吸収を始めてしまうので、たとえ室内だろうとも外に出したままなら勝手に変色反応を起こしてしまうのです。
意識しない人が結構いますが、この不必要な変化こそが寿命を無闇に縮める原因となっています。
使用して劣化するのは仕方ないですが、そうでないなら非常に勿体ないので使わない時は必ずケースに入れて紫外線を遮断するようにしましょう。
紫外線以外で気をつけるべきコト
持ち込まれる調光眼鏡・サングラスで他によくあるのが、レンズ表面が傷だらけというパターンです。
調光レンズは自転車通勤やスポーツ目的で使用される機会が多いため、比較的過酷な環境に晒されがち。
落としたり砂やホコリを被ったりと、傷のつく可能性が通常の生活より高いと言えます。
表面に傷がつくとその部分からコーティングが剥がれやすくなるため、調光機能の寿命を短くさせる要因になります。
特に最近はほとんどがプラスチック調光のコーティングタイプのため、傷には充分注意を払ってください。
レンズを拭く時はから拭きを避け、一旦水で表面のゴミを洗い落としてからが良いでしょう。
ちょっとした汚れは思わず洋服の裾で拭きたくなりますが、洋服の生地はレンズにとって研磨布も同然なので、必ずメガネ拭きを使うようにして下さい。
傷と並んで目立つのが、高熱の環境に置いてしまったというケース。
スポーツタイプだと熱に強いと謳っているフレームも多いので、レンズもそうだと勘違いして熱い場所に放置することが結構あるようです。
カンカン照りで灼熱地獄の車内に入れっぱなしにしたり、冬場は荷物と一緒にストーブの近くに置いたり、見えないからとかけたままシャワーを浴びたり。
これをやるとレンズが熱により膨張するのですが、表面のコーティングはレンズ自身ほどは伸びてくれません。
すると、限界まで引き伸ばされたコーティングがあちこちで破けるクラックという現象が起こるのです。
これも傷がついたときと同様にコーティングの寿命を短くします。
調光レンズのデメリットを把握しておく
今回のテーマである寿命以外にも、調光レンズにはデメリットがいくつかあります。
⚫色が抜けて欲しくてもやや時間がかかる
⚫紫外線量だけではなく温度によっても変化量が変わる(温度が低い方が濃い)
⚫色味の薄い調光レンズもある
⚫運転時には色が変わりにくい
よく聞くのはこのあたりでしょうか。
ただしこれは性能の低さという話ではなく、単純に調光レンズの特徴というべきもの。
なので重要なのはその特徴を予め把握しておくことです。どんな場面で困ったことが起きて、どんな使い方をすると便利に使えるのかをイメージしておけば「失敗した!」となってしまうことを防げるはずです。
以下は私が聞いた、実際の使用者の方々のやっちまったシーン。
・ルート配送、営業の方
仕事中に外を出歩く機会が多く、その間だけサングラスになってくれるのが最高とご購入。
車内なら変色しないので配送先で仕事相手と会っても大丈夫と考えていたが、荷物の積み下ろしを手間取るとそのわずか数分の間にみるみる色が変わり、室内で取引先の人とやり取りをする段になるともうほぼサングラス!相手から胡乱げに見られているのに今度はなかなか透明になってくれない…!
このように思いのほかさっさと色が変わってくれてしまうのがメリットともデメリットとも言えるでしょう。頻繁に外と中を出入りする人は、場合によっては物陰などで退色する時間を確保する必要があるかもしれません。
・登山趣味の方
レジャー趣味で1年に何度も登山を楽しむ方が、荷物をなるべく少なくしたいから眼鏡を2本持ちしなくて済む調光サングラスがベストとご購入。
店頭では紫外線照射器で色の変化を見ることが多いので、レンズのMAXの濃さを確認することができます。この方はこれくらい濃いならばと購入を決めたそうで。
ただこのMAXになる機会ってなかなかないんですよね…。
まず紫外線量最大は当然雲ひとつない晴れの時です。でも雲があるとその分紫外線量は減衰します。薄曇りで80~90%、どんより曇りで60%ですから、思ったより濃くなってくれない。さらに夏山登山がメインだったので気温はかなり高め。
結果としてそのレンズ最高濃度の92%には届かず、かなり濃くはなったのですがご本人が期待したよりはあともう一歩届かなかったそうです。
皆さんは、どんな環境でどれくらい濃くなって欲しいかをしっかり確認してから購入してください。
調光レンズが最も濃くなるのは真冬のヒマラヤ山頂ですからね!(そんなとこ行かない)
調光機能の寿命とサングラスとしての寿命は別
調光レンズを長持ちさせるには、傷や熱をなるべく避けて必要のない時は紫外線には当てないのが重要だと書きました。
ただいくら伸ばしても、いつか必ず調光機能が使えなくなる時は来ます。
では、その場合はもうそのサングラスは捨てるしかないのでしょうか。
実は色の変化が起こらなくなっても、紫外線をカットする機能はまだ生きていることが多いです。
平均して5年前後までであればUVカットの効果は期待できますので、調光レンズとして使えなくなったとしても、普通のサングラスとしてなら充分使うことが可能です。
最後は比較的薄目の色で落ち着きますので、濃いサングラスよりは瞳孔が開きにくくなります。目から入る紫外線の量も減るため、実はちょうどいいサングラスとして使えるのです。
なので諦めて捨てることはせず、最後まで使い切ることを念頭に置いてみてください。
結局、調光眼鏡・サングラスは買いなのか?
寿命があるとはいえ調光レンズの活躍の幅は広いです。
特に眼鏡とサングラスで必要とされる機能が1本で済むというのが支持を集めている部分だと思います。
そして調光サングラスのユーザーは、仮に寿命が早く尽きてしまったとしてもすぐに新しいものを購入する人が多いです。これは、それだけこの機能の有用性を実感しているということなのでしょう。
ここまで見てきたように丁寧な使用を心がければそれなりに劣化を遅らせることは可能なので、ぜひ一度調光レンズの強みを体感してみることをオススメいたします。
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