その眼鏡酔い、放っておいても大丈夫?こんな原因に心当たりがあったら要注意

眼鏡をかけたことがある人にしか伝わらない眼鏡酔いという言葉。
多くは眼鏡を新しくしたことによる見え方の違いに脳がついていかない時に起こる症状です。

この眼鏡酔いですが、

放っておいてもすぐ慣れるよ」と言われる時もあれば
メガネ変えた方がいいんじゃない?」と時もありますよね。

実際のところどっちなの?と悩んでしまう人が多いと思うので、この記事では眼鏡酔いの原因とすぐに対処した方が良いパターンをいくつか紹介しています。

もし対処しなければいけない状態を放っておくと、様々な弊害が出る可能性があります。
ご自分がこれにこれに当てはまるかどうかチェックしていただければ、 目や体の不調を防ぐことができる可能性が高まりますので心当たりがあるかどうかぜひ確認してください。

症状がひどい場合は問答無用でアウト

この後眼鏡酔いのシチュエーションと対処法を順番に解説していきますが、どの場合であっても『眼鏡酔いの症状がひどい』時はすぐさま眼鏡の使用を中止して、作成した眼鏡屋さんに相談に行ってください。

例えば、

  • 眼鏡をかけるとクラクラして歩けない
  • 嘔吐する寸前までいく吐き気
  • 目や頭がズキズキ痛む
  • 眼鏡を新しくしてからずっと体調不良

などの症状です。

眼鏡をかけずにいると何ともなくて、かけた後しばらくのうちにこんな状態が発生するのであればほぼ間違いなく眼鏡に原因がありますのですぐさま対処しましょう。
このレベルになるともはや慣れる慣れないの状態ではなくなっているので、我慢するのは全くお勧めいたしません。百害あって一利なしレベルの状態であると思っていただいて結構です。

「なんとなく気持ち悪いけど我慢できるような気もする」 のなら、次項からの解説を見ながら判断してみて下さい。

レンズに変更があった時

眼鏡の度数の進行というのは、なかなか止めることが難しいもの。

徐々に強くなっていくのはある程度仕方ないのですが、そんなとき眼鏡酔いは発生します。

球面度数がかなり強くなった

球面度数とは、処方箋や眼鏡を作ったときに渡される明細に【SPH】や【S】や【P】の箇所に書かれている数値。
要は普通に眼鏡の度数なに?と聞かれたときに答える数値ですね。

眼鏡のレンズにこの球面度数を入れることでピントが合ってモノが見やすくなるわけですが、ピントを合わせる代わりに元の見え方とは少しばかり違いが発生します。

 

近視用眼鏡であれば、
・景色が小さくなる
・レンズ周辺部が中心に向かって内側に歪みが出る

遠視用眼鏡ならその逆で
・景色が大きく見える
・レンズ周辺部が中心から外側に膨らんで見える

 

といった変化が起きます。これはレンズの性質上多かれ少なかれ起きるもので、裸眼と比べて発生するこの違いが脳を混乱させ、場合によっては「眼鏡酔い」の症状が出てくるわけですね。

眼鏡を作る時、この差異が大きくなりすぎないように我々検査員は注意します。しかし必要な視力が出にくい場合、どうしてももともとの度数よりかなり強く作らなければならないときがあるので、そういったときは眼鏡酔いが起こりやすいでしょう。

この眼鏡酔いを慣れで片付けていいのかは個人差があるので難しいのですが、ひとつの基準として

もともと低度数(-2.00~3.00以下)の人が『3段階以上』強くなった場合
もともと高度数(-4.00~5.00以上)の人が『5段階以上』強くなった場合

などは度数を上げすぎたのかもなあと思うことが多いです。
1段階は0.25なので、近視なら-2.00→-2.75になったとか、-5.00→-6.25になったとかの場合ですね。
もちろんこれでかけて大丈夫なら問題ないのですが、眼鏡酔いが発生してしまっているのなら、まずもう少し下げて調子が良くなるかを確認するところから始めます。

これより少ない変化でもダメなときはダメですが、あまり下げすぎても見え方の改善も少ないでしょうから様子見してもらったり他の原因を探ったりします。

乱視が進んだ、軸度が違う

お次は乱視ですね。
乱視は人によって違う特定の方向にモノが二重に見える現象で、それを直すために乱視度数というものを入れます。【CYL】や【C】などと書いてあるものがそうです。【AX】は軸の角度です。

乱視がそれなりにある人が乱視度数を入れると視力にかなりの改善が見られることが多いです。しかしその反面、球面の度入れより複雑な修正をするレンズになるので、レンズ周辺部の歪みがさらにひどくなっています。従って乱視度数の数値が上がった場合、眼鏡酔いはそれなりに起こりやすい印象。
これを嫌って可能な限り乱視を入れない検査員もいるくらいなので、今までと乱視度数が違った場合は注意して下さい。
また、軸度も時間が経つと変わることがあります。それに合わせて処方も変更されると今までと違う感覚を覚えるかもしれません。

ちなみにこちらの度数は、あまり一気に上げることは少ないです。
状況にもよりますが、私はなるべく『3段階以上』(つまり0.75以上)は上げたくないですね。眼鏡が帰ってくる率が跳ね上がる気がします。

加入を足すことで視野が狭くなる

こちらは遠近両用眼鏡のお話です。
加入はレンズ下部に入れる近くを見るための度数のこと。【ADD】となっている場合もあります。

これが強いほどに手元はよく見えるようになるのですが、レンズの上(遠くを見る部位)と下(近くを見る部位)の差が大きくなるとやはり眼鏡酔いを起こしやすくなります。
遠近は本当に自然にはありえないような見え方で設定されるので、脳の混乱は単焦点の比ではないんじゃないでしょうか。多くの人が少し経つと慣れていきますが、やはり加入度数が強すぎれは適応できる範囲を越えてしまうハズです。

こちらも『3段階以上』変えることはほとんどやりません。

そもそも基本的に加入の上限は+3.50ですから(+4.00もあるけどよほど特殊な状態でないと入れません)、球面度数などと比べて一気に強くする機会は少ないです。
たくさん加入を上げないと手元が見えないようなら、逆に遠く用の度数を落とすことを考えたほうがよいです。そちらでも手元が見やすくなる効果がありますので。

PD表示が今までと違う

PDとは左右の黒目同士の距離のこと。
眼鏡レンズには光学中心という最も歪みのないポイントがあって、そこがちょうど黒目の位置に来るように設定するためにPDを測って眼鏡を作ります。

しかしなぜかこのPDの測定をミスして(測定中に機械か目の位置が動いてしまった等)本来の数値とはズレてしまう場合があるようです。
このズレがあるとレンズの真ん中以外、つまりやや歪みが発生した場所に常時目線がいくようになってしまうので、眼鏡酔いを起こす場合があります。

PDズレの許容範囲は度数が強ければ強いほど厳しくなるので、度の強い眼鏡をしている人は今まで作ってきた眼鏡のPDの記録しておいて大きなズレが起きてないか確認すると安心です。

アイポイントの縦ズレが起きている

アイポイントとはレンズ中の黒目部分に当たるポイントのことです。先程説明したPDはこの左右のアイポイント同士の距離のことを言いました。

実はこのアイポイント、左右ではなく上下にズレる場合があります。
例えばものすごくシンプルに、鼻眼鏡をするとレンズを見る位置は縦にズレますよね(年配の人が老眼鏡でたまにやるアレです)。こうなると中心から外れた場所にある歪みがやはり発生するので見え方の調子をおかしくする人が出てくるわけです。

他に外的要因で動いてしまう場合以外の原因としては、遠近両用ではどこから近用部の度数が入るかを決めるBTという数値があります。この設定を間違えると、まっすぐ遠くを見たいのに近く用の度数が入ってきてぐわんぐわんするとかいう完全に眼鏡屋が悪い状況が起こり得ます。これはもう本当に申し訳ない。

ただこれは眼鏡の調整で見える位置を動かすことが可能なので、うまく行けば改善するチャンスがまだある状態。なので申し訳ないですが、これっぽいなと思ったら眼鏡屋に持ってきて下さい。

フレームに変更があった時

こちらはレンズではなくフレームに原因があった場合です。
フレームを新しくしたパターンからフレーム自体にトラブルが発生した案件まで色々考えられるので見ていきましょう。

鼻パッド付きから一体型になった


オバラメガネ

よくあるのがこちらのシチュエーション。

眼鏡の鼻部分は大きく鼻パッドつきとフレーム一体型の2種類に分かれています。
この2種類は好みがかなり分かれるところなので、どちらのほうが優れているといったことは申しません。ただし、片方からもう片方に乗り換えた場合は要注意です。

鼻パッドと一体型の最大の違いは、かけたときに目からレンズまでの距離(頂点間距離)が変わること。

鼻パッドのほうが鼻当て部分が高く、レンズまでは遠くなります。
一体型はかなりレンズとの距離が近め。

私はどちらのフレームも使っているのですが、たしかにこのふたつをかけ替えるとわずかに見え方の違いを感じます(同じ度数が入っているのに)。一体型のほうがレンズとの距離が近いせいで度数が強くかかり視力としては上がりやすい特徴があるのですが、逆にそのせいで思ったよりレンズの矯正が強く働き眼鏡酔いをしてしまう場合があるのです。

ということで、鼻パッドから一体型にフレームを変えた時に特に起こりやすいことを覚えておきましょう。人によってはどちらかしか慣れられないというお話を聞くこともあるので、フレームを変更して調子が悪かったら元のタイプに戻すのも一つの手です。

フレームをぶつけた、踏んだ、ひん曲げた


JINS

上で鼻当てが変わる影響はかなりあることをご説明しました。
もうひとつこれを起こしやすい原因として、使用中にどこかにぶつかったとか転んだとか、ベッドや地面に置いた眼鏡を踏んでフレームを曲げてしまった場合が挙げられます。

鼻パッド部分というのは圧力に弱く、結構簡単に根本から曲がってしまうもの。眼鏡踏んじゃったんだけどーと調整に持ってこられる眼鏡を見てみると、高確率で鼻パッドがつぶれたりしています。

これを放置すると、それまでと頂点間距離が変わるため微妙に違和感を感じる人もいるようです。悪いと眼鏡酔い症状までたどり着いてしまうことがあるので、かけている眼鏡の鼻パッドの位置をちょくちょく確認して明らかにおかしい配置になっていないかをチェックしてみて下さい

天地幅がかなり広くなった

最近の流行りに、ボストンやラウンドに近い丸型眼鏡という形状があります。
若い女性が小顔効果を狙ってでっかい眼鏡をかけているのを街でよく見かけますよね。

丸型はオシャレで素敵な玉型なのですが、このタイプのフレームに変更した場合なにがマズいかというと、縦方向にレンズ面積が増えたせいで今までなかった歪み範囲が広がってしまうことです。
それまでであればフレーム枠の外に見切れていた場所だったのに、悪い言い方をすると「余計な歪み付きの視界が増えてしまった」ということ。この部分が頭を動かすたびにチラチラ視界の端っこで動いて気持ち悪くなってしまう人がいるんですね。

この事例は他のものと比べると適応できる場合が多い気がします。
元のフレームと視野の中心の見え方は変わっていないハズですから、脳が慣れてしまえばそのチラつきをいずれ気にしなくなってくれる可能性が高いと言えます。

カーブの強いフレームになった

オークリーをはじめスポーツ用のサングラスみたいなカーブが強い形状をしているフレームがありますよね。
まさにスポーツを始めんがためにサングラスに度を入れる人もいれば、日常でも格好をつけるためにやや曲がりのある眼鏡フレームを利用する人もいます。

しかし曲がりがあるほどに歪みも強くなるのが眼鏡のレンズ。特にカーブフレームはこの見え方の悪化がかなり顕著で、最初はイメージしていた以上の違和感を感じてしまうハズです。

なので度の強い人にはあまり推奨されないフレームでもあります。どうしてもというなら、レンズの各部にシーマックスなどの光学補正を施したオーダーメイドレンズを使うと発生する歪みを細かく修正してくれるので眼鏡酔いをしなくて済むかもしれません。

コンタクトから眼鏡に変えた

年齢を重ねたり生活環境が変化することによって、コンタクトをしてたけど眼鏡も作りたいとか、逆にずっと眼鏡だったけどコンタクトに挑戦したいというタイミングが訪れることもあるでしょう。

ココで気をつけてほしいのは、前者の「ずっとコンタクトでこれから眼鏡を使い始める人」
コンタクトは眼球に張り付いているので、目とレンズの距離はほぼゼロ。この人が眼鏡にかけ替えた場合、頂点間距離が離れたことによるレンズの歪みというものを初めて体感して眼鏡酔いを起こす可能性があります。

最初にこの歪みを感じた時、必要以上に慣れるのが難しい場合があります。
今までできた行動がぐらぐらして怖い、走っただけで景色がおかしくなって気持ち悪い、こう訴える方は結構いるイメージですね。
ただ正直これは十分に想定できる状況とも言えます。特にコンタクトの時点で度数がかなり進んでしまっている人は、眼鏡との違いに戸惑うことでしょう。しばらくすればある程度は慣れてくるはずなので、よほどツラい状況でなければ調子が上がることを期待していいと思います。

総じて「初めて」がある場合は様子見でもいい

眼鏡をかけることを考える時、こんな風に色々な「初めて」があると思います。

初めて眼鏡をかける
初めて乱視を入れる
初めて遠近両用を使う
今までにないタイプのフレームをかける

 

こういった時、視界には決して少なくない変化が発生しています。

初めての状況はあなたの目も脳も必ず最初は戸惑います。

 

自覚しないほどの影響で済むことが多いだけで、ある意味で眼鏡酔いというのは通過儀礼のようなものなのかもしれません。(まあ自覚がなかったら眼鏡酔いとは言わないですが)

必要でかける眼鏡ですから、酔ったからといってすぐ諦めてかけなくなってしまうのではなく、酔っているのに無理にかけ続けて体調をどんどん悪化させるのではなく、現在の状態と原因をなるべく正確に捉えて快適な眼鏡をかけていきたいですね。

いずれにしても、これはおかしいと思ったら眼科医もしくは眼鏡屋に相談されるのが最上です。この記事で紹介したことを思い出しながらお話をしてくだされば、きっと使いやすい眼鏡に変えていくことができると思います。