コンタクトレンズの利用者が必ず考えなければならなくなるものに「何歳までコンタクトを使い続けてよいのか」という問題があります。
年齢とともに目の状態も老化が進んでいき、コンタクトレンズが使いにくくなるだろうことは想像できます。しかし、それが一体何歳ごろの話なのか、どういった基準で別の視力矯正に転換を図っていくのがよいかは個人個人で大分バラバラなようです。
可能ならば使い続けていきたいと考える人も多いと思うので、ここではコンタクトレンズの装用を続けるかやめるかの判断基準と、長く使用するためにはコンタクトとどのように付き合っていけばよいかを見てきましょう。
年齢制限はない。けれど…
まずシンプルにお答えすると、
コンタクトレンズの使用に年齢制限はありません。
目の状態と使用環境が許すなら、いつまでも使って構わないというのがコンタクトです。意外でしたか?
50~60代の方でも使っている人は使っていますし、当店であれば80歳越えでコンタクトを装着して悠々と出歩いている方がいます。
ハードからソフトへなどコンタクトの種類は時期によって変わってくるかもしれませんが、扱えるのであれば全然問題ないというのがコンタクトレンズなのです。
とはいえ、望めば誰もが高齢になるまでコンタクトを使えるかと言うと、残念ながらそうはなりません。
コンタクト使用年齢の傾向を見ると、
10~20代はコンタクト多め。眼鏡もそれなりに使用者アリ。
30代から眼鏡人口が増え始め、半分以上に。
40代あたりで完全に眼鏡に移行する人が多い。
といったイメージでしょうか。
多少の地域差はあるでしょうが、おそらく販売店から見た印象はこれと大差ないかと思われます。
どんな理由でコンタクトをつけなくなるか
40代で一区切り
ではこの40代に一体何があるかを考えてみましょう。
目における40代のメインイベントといえば、
【老眼の発症】
です。
老眼とは目に備わっているピント調節機能のことで、目の水晶体を筋肉で動かすことで遠くを見たり近くを見たりをサポートしています。しかしそこは筋肉の話ですから、腕や足と同じように老化の影響をうけてしまいます。
大抵の人はそれを自覚し始めるのがちょうど40代という年齢。
こうなると今までと同じようにコンタクトレンズをつけていても、遠くは見えているものの近くを見るためのピント調節力が不足していきます。裸眼では手元は見えることが多いので、”コンタクトをつけると近くが見えなくなる”状態になってしまうわけですね。
結果として、簡単にかけ外しができる眼鏡に移行する人が多くなっていくというのが理由でしょう。
その他のコンタクトをやめる理由
☆瞳自体にトラブルが発生した
目の表面にある角膜内部には角膜内皮細胞というものがあり、眼球を保護しつつ角膜の透明性を保つ働きをしています。この細胞は空気中や涙から酸素と栄養を取り入れているのですが、コンタクトレンズを常用しているとどうしても細胞に行き渡る酸素と栄養が減少してしまいます。
すると角膜内皮細胞の数自体も減ってしまい、やがて瞳が白く濁っていく症状が発生。
この細胞はそもそも加齢により少なくなっていくものですが、一度減ったら再生しないのも相まって、一定以上減少したことが認められたならコンタクトの使用を中止してくださいとドクターストップがかかるという流れです。
他にもアレルギーやドライアイや怪我によってコンタクトが使えなくなる事例も少なくありません。
☆取り扱いの手間
コンタクトは便利ですが、それなりに取り扱いが面倒なもの。
ワンデータイプですらその日の目の調子によっては付けづらかったり目薬が必要になったりするのに、2週間以上の長期タイプではめんどくさいレンズのお手入れをしなければなりません。いい加減その作業が面倒くさくなって眼鏡のほうが楽だーとなっていくんですね。
☆白内障の手術
老眼と同じように加齢で進行しやすいものに白内障があります。
これも水晶体内細胞の変質によって視界が白濁していく病気ですが、今は手術で人工レンズに置き換えることでかなり簡単に解決できるようになりました。
この時にレンズの調整によって好みの距離にピントが合うよう調整が可能なので、今まで必要だったコンタクトが要らなくなる場合があります。基本的に白内障後は一点にしかピントが合わないので、それ以外のものを見る時は視力矯正が必要になります。となるとコンタクトでは不便ですから、眼鏡に変更するという方が大半でしょう。
☆必要性の減少
コンタクトの利点といえば、見た目の印象を良くして眼鏡なしのファッションを演出できることや、視野が広く眼鏡をかけること自体の煩わしさから解放されることが挙げられるでしょうか。
しかし年を重ねるごとに見た目に関する重要性は減じていくのが普通です。特に結婚後や子供が生まれたあとなどは、外向きに魅せることよりも家庭内での利便性のほうが大事になっていくので、段々眼鏡でも構わないと考える流れに変化していきます。
さらに最近の感染症の流行により外出の機会が減ったため、ますますコンタクトが必要だといえるシーンは少なくなっているのかもしれません。
長く使い続けるには
使用レンズの見直し
コンタクトレンズを長く使用するためには、瞳の状態をいかに健康に保つかが重要です。
まず現在使っているレンズが自分にあっているかを改めて考えてみましょう。
コンタクトの要素としては
・素材
・ベースカーブ
・度数
・サイズ
などがありますが、意外と最初の頃に決めたレンズを惰性で使っていて、本当に現状の瞳と相性の良いレンズを使っている方というのは多くないと言われています。勿論価格の問題もあるので簡単に変えられる話ではないかもしれませんが、目の健康というのはいちど悪化すると元通りの状態を取り戻しにくいので、なるべくなら定期的に使用するレンズの見直しを計っていきたいですね。
ベースカーブやサイズの見直しによって装用時や脱着時に瞳を傷つける危険を減らすことができますし、不要なほどの度数で過矯正気味になっている人はそれだけでドライアイや体調不良の元になっている可能性もあります。
あと特に言われるのは、酸素透過率の高いレンズを使いましょうということ。
代表格である素材のシリコンハイドロゲルは、含水率を抑えて瞳を乾きにくくさせた上で、酸素をよく通し角膜内皮細胞への補給をスムーズに行わせるのでおすすめです。
使用場面の見直し
例えば老眼の進行によりコンタクトが以前より使いにくくなった。
しかしコンタクト自体の利点はまだ感じている為なるべくならもうしばらく使っていきたいという話なら、レンズとの付き合い方を見直してみましょう。
今までのレンズでは近くが見えなくて困るというなら、単純に度数を落とすという選択肢があります。
コンタクトは割合しっかり見える度数で処方箋が出されるので、少しくらい落としてもそこまで日常生活に不便を感じない確率は高いです。そして度数を落とすということは近くを見るための調節力も少なくて済むので、老眼の初期~中期段階ならそれでなんとか対応できるかもしれません。
もしくは遠近両用のコンタクトレンズを考えてみるのもよいでしょう。
遠近両用眼鏡よりさらに遠と近の見え方に妥協が必要ですが、それでもこのレンズを重宝している人は大勢います。
後はコンタクトと眼鏡の併用もアリです。
使い分けだけでなく同時使用も十分検討の余地があります。遠用度数を入れたコンタクトの上から老眼鏡をするような形ですね。それやっても大丈夫なのと思う方もいますが全く問題ありません。
まとめ
以上のように、コンタクトレンズが何歳までつけられるかというのは、その歳になるまでどのようにコンタクトと付き合ってきたかに関わってくるようです。
コンタクトレンズは少なからず目に悪影響を与えることは間違いありません。
特に若いうちから装用をしていた人ほど瞳へのダメージは蓄積しています。
なので、負担の少ない正しい装着方法を守りつつ、検査による眼内環境の変化に敏感になっておくのが長期間コンタクトを活用する秘訣と言えるでしょう。