球面と非球面の違いはコレ!あなたにピッタリのレンズをズバリお答え

眼鏡を作る時には、「眼鏡には球面レンズや非球面レンズがありますが、どのレンズをお入れになりますか?」と必ず聞かれることと思います。

非球面とやらのほうがいいレンズっぽいけど、実際自分はどれにすればいいんだろう?と、その場の説明だけではよくわからなかったりするのではないのでしょうか。
結局正確には把握できないままなんとなく高いレンズをつけてしまった…というのはよくある話です。

勿論それでも問題はないですが、せっかくならあなたの目にぴったりなのがどのレンズかなるべく自信を持って選びたいですよね。

ここではどんな人がどんな機能のレンズをつけるのがベストか、わかりやすい基準を色々な視点から提示していきますので、是非参考にしてください。

※なお、この記事は近視や遠視の方などが使う単焦点レンズについての解説がメインです。
遠近両用レンズに関しては別記事をご覧ください。

 

眼鏡レンズの3大要素

レンズの三要素

眼鏡のレンズは、大きく分けて3つの要素を考えれば決定することができます。

  • ①設計(見やすさ)
    ②屈折率(厚み)
    ③コーティング(追加機能)

①『設計』は球面や非球面のことで、どれくらい歪みの少なく見やすいレンズがいいかを決め、
②『屈折率』で厚みや重さが決まり、
③『コーティング』で傷防止やブルーライトカットなどの機能を足すことができます。

安ければフレームを入れて数千円で眼鏡が作れる時代ですが、大事な目に関わることなので適当に決めるよりしっかりと把握して選んでいきましょう。

 

球面、非球面、両面非球面ってなに?

眼鏡のレンズを上から見ると、まったいらな板状ではなくカーブを描いていますよね。
目が悪くなるのは大抵、外から入ってきた光があなたの目の網膜に届いた時に丁度良い位置で映像として写らないことが原因です。
そこでレンズのカーブによって光を曲げて修正し、ぴったりと網膜上できれいな像を結ばせると景色をはっきりと見ることが出来るわけです。

これが眼鏡の最大の役割なわけですが、このカーブのつき方こそが球面か非球面かの違いとなります。

 

球面レンズ

古くからある設計のレンズで、外面と内面の表面の曲がり方が一致しているものを指します。

大きめにカーブを描いているレンズで、レンズ中心より外側の方が厚みが出ることにより、レンズ周辺部に歪みが出やすいのが特徴です。(これを収差といいます)
カーブを描いているレンズといえば魚眼レンズですが、あれも中心部分はまだしもその周囲は景色が強く歪んで非常に見辛いですよね。それを考えるとイメージしやすいかも知れません。
度数が高いほど歪みは大きくなりますので、球面レンズは度数が低めの人以外にはオススメされないことが多いです。

 

片面非球面レンズ

次に登場したのが片面非球面というレンズ。
外面か内面のどちらかが、通常の球面のカーブよりいくらか曲がりが緩やかになっている(=平らに近い)のが特徴です。

ということはその分歪みが少なく抑えられますので、見え方の改善が期待しやすいでしょう。
現在最も多く使われている設計となります。

 

両面非球面レンズ

片面非球面を更に進化させて、両側の面ともなるべく平らに近づけようと設計されたのが両面非球面です。

もうお分かりの通り、最も歪みを少なく抑えることが可能で、主に乱視でお困りの人はぜひこの設計を利用することをオススメします
ちなみに曲がりを減らした分、屈折率の差ほどではないですが厚みを抑えることが可能になっています。

 

オーダーメイドレンズ

一人一人に合わせた特殊設計のレンズ

眼鏡をかけた人を横から見ると、目からレンズまでの距離やかかっているレンズの角度が結構違っているのが分かります。
距離や角度が最適な位置にないと、眼鏡は矯正力を発揮しきれません。ですが初めからこの違いを計算に入れてレンズを作成することで、その見え方のズレや歪みを最大限減らすことが可能になります。

度数が乱視がかなり強めの方は、使い心地がかなり改善することでしょう。

 

屈折率は厚みと扱いやすさ

球面か非球面かを決める時に決して切り離して考えられないのが、屈折率をどうするかということ。

屈折率とは、光がレンズを通るときにどれくらい曲げられるか?ということを示しています。
つまり屈折率が高いほど大きく光を屈折させるので、強く矯正がかけられる=度数が強い人に向いているということになります。
また、短い距離で曲げる力が大きく働くということは、高い屈折率であるほどレンズの厚みも小さくなります

眼鏡屋さんで提示される屈折率は主に、「1.55」「1.60」「1.67」「1.74」あたりになるでしょう。
数字が大きいほど薄型レンズであると言えます。
(他にも屈折率はありますが、今回は取り上げません)

 

最近はこんなにあるぞコーティング

最後の要素が眼鏡レンズに取り付けるコーティング。
生地自体に練り込むタイプと表面に貼り付けるタイプがあるのですが、いずれにしてもプラスアルファの性能を引き出してくれます。

・【紫外線カット】‐いわゆるUVカット。最近はほとんどのレンズに標準装備。
・【キズ防止】‐レンズを保護して傷つきづらくする
・【撥水】‐水分を弾いて汚れが残りにくくなる)
・【帯電防止】‐埃やチリ、花粉がくっつきにくくなる
・【耐熱】‐厨房などの熱を扱う作業で有用、レンズが痛みにくくなる
・【420カット】‐目に悪影響があるとされる可視光線部分を防ぐコーティング、眩しさ避けにも有効
・【ブルーライトカット】‐パソコンやスマホから出る青色光から目を保護する
・【近赤外線カット】‐皮膚の奥深くまで入り込んでシワやたるみの元となる光を軽減する
・【裏面UVカット】‐顔と眼鏡の隙間から入り込んで目に反射する紫外線を防ぐ

こういったコーティングを加えることで使いやすくなったり長持ちしたりするので、目的に応じて必要なものを選んでいきましょう。

ちなみに、個別につけるだけではなく複数の効果がセットになったコーティングもあります。コスト的にもお得になる場合が多いのでお試しあれ。

 

レンズ選びの一発丸わかり早見表

レンズ表を調べる女性

ここまでレンズの基本を見てきました。
でも、

「設計と屈折率とコーティングのことは何となくわかったけど、実際に選ぶとなると自分にとってどのあたりがベストなんだろう…」

と、まだピンとは来ないかもしれません。

基本的には店員さんが詳しく説明してくれるので、お店で一緒に考えてもらうのがベストです。しかし、

・最初から見当をつけて行きたい
・必要のない高いレンズを入れてられてしまうのが心配
・ネットで購入したいんだけどどう選べばいいかわからない

といった時には参考になるものが欲しいですよね。

なので度数や状況別にグループ分けをして、それぞれに当てはまる人はどのレンズを選べば良いかがひと目でわかる表を作ってみました。

それがこちら。

眼鏡度数丸わかり表

さあどうでしょうか。
レンズ選びに困っている方は、この表を使えば一発で答えを導き出せるようになっています。

では使い方をご説明します。

 

自分が①~④のどのグループに当てはまるかを確認する

例えばあなたが作ろうとする眼鏡に-2.50の度数が入る時、表で言うと-2D~-4Dの間ですので②のグループを見て下さい。
左右で度数が違う場合、強い方の度数を基準にします。

また、度数の下にある生活環境や使用目的がよく当てはまるようなら、度数が少し違っていても隣のグループで考えるのもアリです。

 

マスの色を参考にする

グループが決まったら、そのグループのマスを見て下さい。
3色に塗り分けてありますよね。それぞれが何を表しているかと言うと、

✫黄緑マス=最も適している
png丸わかり表

見やすくて価格とのバランスが良い

灰色マス=ここでも悪くはない
丸わかり表灰色

予算が厳しければ左寄りの灰色マスを、お金は出せるのでもう少し良いものが欲しいなら右寄りの灰色マスを選ぶ

黒色マス=選ばない方が無難
丸わかり表黒色

歪みが大きすぎて見づらく目の負担が大きくなるか、かけたお金に対して効果が全く見合わない、のどちらかなので非推奨

というイメージです。

基本は黄緑の中から選んでください。
乱視が全くないか弱め(-0.75D以下)なら片面非球面で十分です。
大体どの眼鏡屋さんでもこのあたりのどこかをオススメされると思います。

 

しかしそれでも迷ってしまう優柔不断なあなた!そんな人はもう悩まずに、

のついたマスにしましょう。

特別な目的や条件がなければ、性能とコストの面で最も満足できる位置です。

ただし乱視が-1.00D以上ある場合、◇のマスが歪みを効率よく防いでくれるのでそちらでも良いと思います。特に-2.00D以上の強度乱視の方は迷わず両面非球面にしましょう。

 

レンズ選びのよくある4パターン

※S=球面度数(いわゆる普通に言う眼鏡の度数)
※C=乱視度数

 

右 S-1.00D
左 S-1.00D
『基本はメガネかけなくても生活出来るけど、運転や映画見たりする時に使いたい』

オススメ:1.60片面非球面
低度数対応表

度数としては一番少ない人のグループ。
そこまで不自由はしておらず、最近眼鏡をかけ始めた人に多い状況です。

正直これくらいの度数であれば、レンズに気を使う必要はほとんどないです。フレームに最初から付いてくるレンズがあればそれで充分

1.55でも問題ないですがあえて1.60としたのは、見やすさや丈夫さの機能がバランスよくまとまっているからです。また、1.55球面レンズはUVカットが不十分な場合があります。
それ以上の屈折率は全く不要で、そのお金はコーティングに回した方が良いでしょう。

 

右 S-3.00D C-1.75D
左 S-4.50D C-0.50D
『常にメガネはかけている。最近、随分度が進んでしまった』

オススメ:1.67両面非球面
中度数対応表

度数としては中程度。
厚みが目立ち始めるので、一段階は薄くしておいた方が良いと思います。

乱視が強めなので、歪みを抑えたければ両面非球面が効果を発揮します
同じ屈折率でも両面は片面よりやや薄くなるので、その意味でも軽くて見やすいレンズになります。
またこのケースでは左右の度数差が大きめなので、低い屈折率だと左と右の厚みの差も大きくなりがち。見た目のアンバランスさが際立つので気をつけましょう。

まあそれでも1.60や1.74で入れる人が一定数いる、そんな度数です。

 

右 S-8.00D
左 S-8.00D
『メガネがないと何も見えない。長時間かけていると、目が疲れて頭痛がしてくる』

オススメ:1.74片面非球面 or オーダーメイドレンズ
強度数対応表

ここまで来ると、基本のレンズでは荷が重いかも知れません。
レンズの厚みが6mmや8mmとかの次元になるので、なるべく薄くしておかないとレンズからド派手にはみ出してしまいます
重さも相当なもので、かけた時にずり下がりやすくなり、鼻に跡がつきやすくなるのも気になるポイントです。

完全に1.74推奨ですが、それでもまだ調子が良くないならオーダーメイドレンズを使ってみましょう。
レンズ周辺部の見やすさが段違いなので、強度数で悩んでいるなら試す価値アリです

他の手段としては、小さいフレームを選ぶとレンズも小さくなるので、結果厚みを抑えることが可能です。この辺りの度数では、レンズの径が1~2mm小さくなるだけで驚くほど厚みの差が出るのです。

 

右 S+4.00D
左 S+4.00D

『老眼鏡として手元のみを見る場合』
オススメ:1.60or1.67片面非球面

『遠視の眼鏡として遠く用に作る場合』
オススメ:1.67片面非球面

遠視と老眼は入れるレンズがどちらもプラスの数字が入る凸レンズになります。ですが症状や原因は全く別のものなので、選ぶべき設計や屈折率は少し変わってきます

老眼鏡として使うのなら、モノを見る距離は近いですから多少レンズのグレードを落としても問題ありません
読書などで下を向きっぱなしの時間が多いなら、眼鏡が重みで落ちてこないよう薄型にする意味はあります。乱視もよほど強くなければ片面非球面で事足ります。というより、老眼鏡で乱視を入れることは多くないでしょう。

遠視で遠くも見る、つまり生活全般で使用するのならレンズは良いものを選んでください。
レンズ選びの考え方としては近視と同じように思ってもらえば大丈夫です。

 

その他注意しておくポイント

注意FAQ

設計や屈折率を上げると目の縮小や輪郭の崩れを軽減できる

眼鏡をかけると、目の大きさが変わったり顔の輪郭部分が凹んだりが気になりますよね。
レンズの収差が原因なので、レンズの歪みや厚みを減らすと一緒に改善が期待できます。
ここをとても気にされる方は、乱視がなくても両面非球面レンズを使ったりする場合があります。

 

使えるレンズの種類や値段は店ごとに違う

多くの眼鏡屋さんは、設計や屈折率を上げると値段が上乗せされます。
しかし大手のチェーン店などは、専売契約や大量仕入れ、あるいは自社レンズの開発使用などによりこの業界の常識を打ち破った価格設定になっていることがあるので要チェックです。

JINS
基本的に全て片面非球面レンズ。両面非球面は取り扱いなし。
屈折率も度数に合わせた最適なものをJINSが自動で選ぶ仕様で、どれにしても追加料金はかかりません。
ブルーライトカットなどの追加コーティングが¥5,000~でつけられます。

Zoff
最初についているのは1.55球面レンズ。+¥5,000~で1.60片面非球面などに交換可能。
33%と50%のブルーライトカットが無料でつけられるのが特徴です。
こちらも両面非球面は取り扱いが無いようです。

 

条件によっては選べないレンズがある

実は特定のフレームや度数の組み合わせによって、入れられるレンズが制限される場合があります。
例を挙げると、

レンズによって製作可能な範囲が決まっている
-10.00Dのような強度数だと、仮に安いレンズで済まそうとしても屈折率1.55のレンズでは作ることが出来ません。グレードが上がれば製作範囲は広くなっていくのでそちらで対応することになります。

径が足りなくてフレームにはまらない
詳しく説明すると長くなるので理屈は割愛しますが、特に、度数の強い遠視や老眼鏡を作る際に眼鏡をかける人のPD(黒目間の距離)が狭いとよく発生します。目の位置が最も歪みを少なく良く見えるように加工しようとすると、フレームに対してレンズのサイズが足りなくなってしまう現象のことを言います。
これも良いレンズに取り替えるとうまくいくことがあります。

カーブが強くてレンズが外れてしまう
サングラスタイプの中には、フレームが顔の形に沿うようにものすごく曲がっているものがありますよね。
そのフレームに通常のレンズを入れようとしても、カーブの角度が合わずはめ込むことができないことがあります。
おおよそ6カーブや8カーブのフレームが該当しやすく、この場合はハイカーブレンズという元々強い曲がりをつけたレンズを使用しなければならなくなります。

 

まとめ

お店で話を聞きながら選ぶのが一番なのですが、限られた時間の中で説明を受けつつその場でバタバタしながら決めてしまったとしたらそれはもったいないですよね。

『目をよく見えるようにする』という生活の根幹を支えるレンズ選びなのですから、じっくり腰を据えて考える時間も必要なことだと思います。
この記事がその参考になれば幸いです。